バルチスタン州への移動は、広大な未統治地帯と地元の混乱を活用した再編成の機会を提供する。
実際、2024年のイラン・ケルマン爆弾テロやモスクワ近郊で発生したコンサートホール襲撃テロは、バルチスタン州を拠点としたISKPの関与が疑われており、移転後の活動活発化を示している。これらの事件は、ISKPが単に生存を求めたのではなく、グローバルな脅威を維持するための戦略的シフトとも考えられよう。
バルチスタンの複雑な治安情勢とBLAの役割
バルチスタン州はパキスタン最大の州で、資源が豊富だが貧困と不満が渦巻く地域だ。長年、バルチ民族はパキスタン中央政府による資源搾取と抑圧を非難し、独立運動を展開してきた。その先鋒がBLAで、1970年代から武装闘争を続けている。
BLAはバルチ民族主義を掲げ、世俗主義を基調とするため、イスラム国やアルカイダとは相容れない。近年、BLAの活動は中国のBRIプロジェクトに集中している。中国はバルチスタンのグワダル港をBRIの要衝として開発し、パキスタンとの経済回廊(CPEC)を推進中だ。
しかし、BLAはこれを植民地主義、帝国主義とみなし、中国人技術者やインフラ施設に対するテロを繰り返している。
パキスタン政府はBLAを国家の脅威として敵視し、軍事作戦を展開してきたが、今日でもバルチスタン州を十分に掌握できていない。
そして、ここにISKPの移転が絡む。ISKPはバルチスタンの未統治地帯を「理想的な聖域」と位置づけ、2023年頃から本格的に拠点を構築。ISKPの視点では、パキスタン政府がBLAを最大の敵とみなしているため、自組織への積極的な圧力は避けられる可能性が高いと計算しているだろう。