古くから人間との関わりがあり、糞や乳が有用で自然界の循環とも深く関わるヤギとの暮らしを通して学生たちは多様な表現を模索し、コロナ禍でも持続可能な研究・創作・表現活動の場をつくり続けるとともに、次世代のコミュニティの在り方を考察するという、ヤギを媒介として、人が生きていくこととアートとの繋がりを探る試みである。

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その発想の元には、震災直後で各地に放射能のホットスポットの噂があったり、また、小沢が教授として取手キャンパスに赴任した際、様々な理由で多くの授業が上野に移り学生数も減り、キャンパス内も雑草だらけという殺伐とした様子にショックを受けたことがあるという。

高度成長期に開発された都心通勤者のための郊外のベッドタウンは、自身が育った子供時代の現場と重なり、自らの原点や自身が生きる負の環境をひっくり返せないか、荒廃した郊外や里山の活性化に対して何か出来ないかという思いを抱いたという。

人々の日常の営みをひっそりと見守る地蔵からヤギの目へ――。明治以降、西洋から輸入された人間中心で強固な自我に基づくアートの在りようとは異なる、多様な他者の視点を想像力で創作に取り込むことで、負の歴史を新たな議論へ、負の環境をポジティブなフィールドへと転換させるべく、小沢は日々アートが現代社会を生きることにどう関われるかを考え続けているのである。

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小沢剛とヤギのエヒメ

本稿は基本的に本人からの聴き取り等を元に構成。

その他参考文献:

『小沢剛世界の歩き方』、(有)イッシプレス、オオタファインアーツ、2001年

「小沢剛 不完全―パラレルな美術史」展図録、千葉市美術館、2018年

「小沢剛展 オールリターン 百年たったら帰っておいで 百年たてばその意味わかる」ブックレット、弘前れんが倉庫美術館、2020年

※この記事は「ベネッセアートサイト直島」からの転載です。
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