続いて、22個のモジュール間の情報伝達の時間変化を、それぞれの伝達量の高低に従って色分けして12の感覚運動状態として描画をしてみると、赤ちゃんの感覚運動情報は様々な状態をさまようような時間変動をしていることが分かりました。研究者らは、この現象を「感覚運動ワンダリング」と名付けました。

感覚運動ワンダリングでは、乳児のほうが新生児よりも各々の感覚運動状態がランダムに現れることが低く、三連パターン(例:状態2→状態1→状態2)の出現率が高いことが示されました。

これらの結果より、赤ちゃんは新生児から乳児になるにしたがって、「感覚運動ワンダリング」を通してより全身的に協調した動きへ、あるいは、反射的な動きから予測的な動きへと発達していることが示唆されました。研究チームは、このような発達に伴う変化は、自発運動の経験頻度だけでなく、好奇心や探索といった行動に基づいている可能性もあるとしています。

ヒトが、ほとんど意識せずに高度で複雑な運動を行うことができるのは、感覚運動モジュールが形成されているためと考えられています。その準備は、赤ちゃん時代の「もぞもぞ動き」から始まっているようです。

個性に関わっている可能性も

近年は、赤ちゃんが「もぞもぞ動き」をする時の脳の動きも研究されています。

東大大学院教育学研究科発達脳科学研究室の多賀厳太郎教授は、「赤ちゃん研究員」に協力してもらって、光トポグラフィー(近赤外分光法)などの装置を使って、ヒトの脳の発達を探っています。研究成果の中には、赤ちゃんの自発運動と脳の発達との関連性が示唆されたものもあります。

たとえば、赤ちゃんの睡眠には、大人のレム睡眠に対応する「動睡眠」と、ノンレム睡眠に対応する「静睡眠」があります。静睡眠のときは、深く寝ていて身体の動きがなく静かです。対して動睡眠のときは、もぞもぞ動きが活発になり、光トポグラフィーでも独特なパターンが現れます。最近は、ヒトは胎児の頃から睡眠をしており、ほとんどが動睡眠の状態と考えられています。もぞもぞ動きをする動睡眠の期間は、脳の発達に大きな影響を与えていると考えられます。

多賀教授によると、もぞもぞ動きは生後2カ月を過ぎたあたりから脳の発達にともなって変化し、3~4カ月になると無意味な動きがほぼなくなり体制化されると言います。けれど、寝返りやハイハイなどは、発達初期の自発的で無目的なもぞもぞ動きがベースになっていると考えられるそうです。

もぞもぞ動きは、個性にも大きく関わっているかもしれません。

生後数カ月の赤ちゃん約80人に対して、各々の手足にボールをつけて「もぞもぞ動き」の軌跡を測定した調査では、手足の動かし方のパターンは一人ひとりで違うことが分かりました。つまり、自発運動によって脳が発達していく過程で、個性が育まれる可能性が示唆されました。

赤ちゃんがまだ言葉を話さない時に、特に法則もなく動いているだけに見える「もぞもぞ動き」ですが、複雑な行動ができるための身体作りや個性の形成などに重要な役割を果たしていると知れば、さらにじっくりと見守りたくなりますね。

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