ドヤ街に生きる季節労働の男たちと、自分の体を売る女たち。むき出しの暴力と欲望。生と性が重なりながら明滅する。でも絶望しない。田中登は絶対に生を否定しない。人間賛歌なのだ。登場する女や男たちは皆、自分の生にこれ以上ないほどに前向きだ。悶(もだ)え続け、その悶えの声が性の愉悦に重なる。トメには重度知的障害を持つ弟がいる。演じるのは夢村四郎。ラスト近く、ニワトリが飛べないことに絶望した弟は(トメと体を重ねてから)、1人で通天閣に向かい、これをよじ登る。
......この先は書かない。いや書けない。観てほしい。40年前に僕が体験した圧倒的な感覚を、(大きなスクリーンでないのは残念だけど)ぜひあなたにも共有してほしい。
『(秘)色情めす市場』(1974 年)監督/田中登
出演/芹明香、花柳幻舟、夢村四郎、萩原朔美
<本誌2020年9月29日号掲載>
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