<10月7日以降、イスラエルとハマスの紛争がネットで情報戦へと発展。ハマスのサイバー攻撃能力が注目され、偽情報が横行。大手メディアも誤報を拡散し、病院爆発の事例では報道後に撤回があったが、既に社会的影響が出ている。情報の正確性とSNSプラットフォームの対応が問われている状況だ......>

10月7日以降、ネット空間にイスラエルとハマスの紛争の情報があふれた。近年、紛争を起点として多数の国を巻き込んだサイバー攻撃やネット世論操作に一瞬でエスカレーションする様子をまざまざと見せつけた。

ハマスのサイバー能力を中心にエスカレーションの様子を簡単にまとめてみた。あくまでも筆者が知り得た情報の範囲をまとめたものであるので、不足や修正すべき点があるかもしれない。なにしろ名だたる大手メディアですらうっかり未確認の情報を流しているありさまなのだ。

偽情報が飛び交う紛争

ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を行い、イスラエルが反撃を開始して以来、ネット上では偽情報や誤情報が飛び交っている。多くはゲームや過去の紛争の画像などを利用したものだが、中には「ハマスが40人の赤ん坊の首をはねた」というもののある。混乱した状況下ということもあり、一部の大手メディアもこの偽情報を拡散してしまった。

ガザの病院が爆発した件では、ニューヨークタイムズ、ロイター通信、AP通信、ワシントンポスト、CNN、BBC、MSNBC、FOXなどがイスラエルの空爆によるものとして報道した。その後、撤回されたが、影響は即座に各国でのデモやユダヤ人への攻撃となって現れた。

大手メディアが誤報を発信する中、X(かつてのツイッター)、フェイスブック、Telegram、Tik Tokは偽情報の坩堝と化し、ハマスやイスラエル関連のフォロワーは激増した。

悪いことに以前の記事に書いたようにアメリカでは偽情報対策が大きく後退しつつあり、アメリカの研究機関やSNSプラットフォームはこうした状況に対応できていない。SNSプラットフォームに関しては、そもそもやる気がないとも言える。

特にXではイーロン・マスク自身が偽情報や誤情報を拡散しているアカウントやその発言を紹介していることもあって偽情報があふれている。Xの青い認証マークのついたアカウントが誤解を招く発言の70%の発信源になっているという調査結果もあり(認証マークアカウントの70%が偽情報を発信しているという意味ではないのでご注意)、青い認証マークは信用できない情報を発信する警告マークに見えるようになっているくらいだ。

さらにXのノート(発言に対して他の利用者がコメントする機能でモデレーション効果も期待されていた)を書いたアカウントの80%は「役にたった」という評価を受けたことがなく、そもそも「役にたった」というステータスに達したノートはたった7%に過ぎなかったことが、スタンフォード大学Internet ObservatoryのJournal of Online Trust and Safetyに掲載された調査で明らかになっている。

EUはXとMetaに対して警告と要請を行った。従わない場合、EUが調査を行い、最近成立したDSA法の違反が認められると高額の罰金を課される。

この混乱は紛争という特殊な状態だけがもたらしたものではなく、イスラエルとハマスのいずれもネット世論操作に長けていることも要因のひとつだ。そのうえ、インドやイランが干渉している痕跡もあって、情報の真偽はもとより、情報発信者の正体と目的もわかりにくくなっている。

インドが世界的なネット世論操作大国ではあることは前回の記事でご紹介した。今回の紛争に関してインド由来が疑われるネット世論操作活動をデジタルフォレンジック・リサーチラボが確認している。同組織はこの分野で世界的に有名だが、正体も目的も明らかにはできなかった。ただ、インドに関係する誰かが意図的に操作を行おうとしていたことだけが確認されている。インドへの忖度を感じるのは筆者だけだろうか? 中露であればここまで曖昧な結論にはならなかったような気がする。

ハマスのサイバーオペレーション
【関連記事】