コロナ危機で、夢を持って海外に飛び出した人たちが日本に帰れない状況にある。だが僕は、ポップスを置いてニューヨークに渡ったことを後悔したことなど一度もない。ここはジャズの街だ。喧噪や嬌声などのインプロ(即興)が街のあちこちで起こるたび、曲の尺もコンセプトも伸縮自在に変わる。それは3分間の咀嚼の世界ではなく、この瞬間に即興的に生まれる喜怒哀楽が詰まった世界なのだと思う。

「ジャズと僕とニューヨーク」はようやく手をつないで虎視眈々と次を狙う。いま僕は、あの頃のポップスから遠く離れたロックアウト状態にある名も無い人生の駅にいる。10年先には、ジャズのその先にある老若男女が狂喜乱舞するような「本物のポップス」を書ける日が来るかもしれない。それを見据えながら。

<本誌2020年5月26日号掲載>

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