要点は、まず、メイ前首相とEUが合意をした離脱協定の中で最大のネックとなっていた「バックストップ(安全策)」の代替策をいれたこと。このバックストップ案は、もし英国とEUとが将来の通商交渉で合意できなかった場合でも、北アイルランドとEU加盟国であるアイルランドとの間に、物理的国境(ハードボーダー)を置かないようにするための枠組みだった。
修正離脱協定案の要旨は:
──北アイルランドはモノの移動についてのEUの規則に継続して準ずる
──北アイルランドは英国の関税圏に入るが、EU単一市場の「エントリー拠点」になる
──北アイルランドの政治家が今後もこの状態を維持するかどうかを4年毎に決定する
バルニエ交渉官は会見の中で、最後の点が最も重要であったと述べている。
この「決定」は、北アイルランド自治議会での多数決による。
実は、この議会は、プロテスタント系の最大政党DUPとカトリック系の最大政党シンフェイン党とがエネルギー問題を巡って対立したことをきっかけに、2017年以来、機能停止中だ。
また、多数決による決定となると、第1党のDUP(離脱強硬派)が将来を決めることになりかねない。
今後、どうなるか
筆者は(1)から(3)の文書に目を通してみた。離脱後も、英国とEUの協力関係を維持するよう最大限の努力をすると繰り返ししたためられており、教育、労働者の権利、安全保障など具体的な項目についても出来得る限り現状を維持するという。
過去の北アイルランド紛争、そしてベルファスト和平合意の流れを汲んで、アイルランドと北アイルランドとの間にハードボーダーを置かず、両地域の協力関係を継続し、具体的な作業については、部会を設置する。
協定案が離脱予定日(10月31日)までに英議会の承認を得られれば、2年間の移行期間が発生し、英国とEU側は移行期間終了後の自由貿易について、そしてそのほかの様々な事象について話し合いを開始することになる(離脱協定がない離脱となれば、移行期間は設けられない)。
英国本土への帰属を重要視するDUPにとっては、「北アイルランドは英国の関税圏に入るが、EU単一市場の『エントリー拠点』になる」箇所がひっかかる。本土とは異なる扱いは受け入れがたいと考えるからだ。
