国外でもUNHCRが「有害な結果を及ぼしかねない」と警告している他、アムネスティ・インターナショナルなど国際人権団体も批判を強めている。

当事国の政府が合意しているなら何も問題ないようにも思えるが、最大のポイントはルワンダにおける安全への疑問にある。

ルワンダの人権状況を批判した英政府

 “転送” の違法性を指摘したイギリス最高裁の判決によると、ルワンダに送られた難民申請者が深刻な人権侵害に直面する危険がある。だから「転送」の合意は欧州人権条約(ECHR)に違反する、と指摘したのだ。

ECHRでは拷問や非人間的扱いが禁じられているが、ルワンダは政治犯やジャーナリストの超法規的拘束や処刑などでしばしば欧米各国から批判されている。

難民に関する人権侵害も報告されていて、2018年には処遇改善などを求める難民の抗議活動に治安部隊が発砲して11人以上が死亡した。

イギリス政府はECHRに署名しているだけでなく、ジョンソン内閣が “転送” に関する最初の法律を作成した前年2021年、ルワンダの人権状況を批判していた。

しかし、最高裁が “転送” を違法と判断した後、イギリス政府は「ルワンダは安全な国」と強調してきた。今月22日、公共放送BBCに出演したミッチェル副外相はルワンダを「素晴らしい体制(remarkable regime)」と表現した。

そのため、議会が可決した法案は一般に「ルワンダの安全法(Safety of Rwanda Act)」と呼ばれる。

なぜルワンダか?

イギリス政府は白を黒と言いくるめるような苦しい答弁さえしているわけだが、一方のルワンダ政府にとって “転送” はどんな意味があるのか。

ルワンダは人口1400万人たらずの小国だが、紛争の続く隣国コンゴ民主共和国などから12万人以上の難民を受け入れている。このうえイギリスから最大5万人ともいわれる規模の難民申請者を受け入れることには、ルワンダ国内でも不安の声がある。

それでもルワンダ政府が “転送” を受け入れるのは、おそらく一人あたり3000万円の「報奨金」だけが理由だけではない。むしろ大きな目的は、イギリスに恩を売ることにあるとみられる。

この国を率いるカガメ大統領は反対派を力ずくで押さえ込む「独裁者」である一方、資源の乏しいこの国を成長させるため海外から投資を集め、さらにアフリカ大陸全体での自由貿易協定の締結を主導する「改革者」としての顔ももつ。

その外交方針は一言でいえば全方位外交で、欧米や中ロと等距離でつき合うことによる独立性を目指している。

このカガメ政権にとってイギリス政府の負担を肩代わりし、関係を強化することは、ひるがえってイギリスに対する発言力を強めることになる。実際にイギリス政府はルワンダの人権状況を事実上黙認した。

イギリスにとっての見えないコスト
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