コラム

人類の意識進化を促進。脳への直接刺激技術にブレークスルー、10年以内の実用化目指す=TransTech2019から

2019年12月06日(金)14時20分

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Martin博士のチームは、今後3つの方向で、この技術の研究と商用化を目指すという。1つは、アカデミズム内での研究の継続だ。当然ながら脳の大きさには個人差がある。脳のどの部分に超音波を照射すべきかは、MRIを使って取得したデータをソフトウェアで解析し、照射ターゲットを特定しなければならない。このプロセスをより簡潔化し、例えばスマートフォンをかざすだけで照射ターゲット部位を特定できるようにするには、どのような技術を使えばいいのだろうか。照射の際に塗るジェル状の液体なしに、照射できないものか。他の分野の研究者と協力しながら、こうした問題をアカデミズム内で解決していきたいとしている。

2つ目は、民間企業の協力を得たデータ収集だ。手始めに北京にあるスポーツジムに超音波のヘッドセットを設置し、興味のある人たちに利用してもらいデータを収集していくという。使うのは妊婦の腹部に照射して胎児の様子を確認することに使われる経会陰超音波と呼ばれるタイプのデバイスで、人体への危害はないと考えられているものだ。

3つ目は、大企業との協力。完成したデバイスを大量生産し価格を引き下げ、大量に流通させるには、大企業と協力体制を組むことが不可欠だと言う。

同博士によれば、5年から10年以内に実用化され、最終的には1000円ぐらいの値段での製品化が可能かもしれないという。完成すれば自己超越はもちろんのこと、てんかんや、パーキンソン病、認知症、心臓発作、アルコール・薬物中毒など、あらゆる神経系、精神系の疾患の予防や治療に、効果があるだろうと語っている。

同博士は「これまでは自己超越したい人、した人への支援が中心だった。これからは一般の人々が根源的幸福に到達できるように注力していく」と語っている。

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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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