コラム

日本の皆さん、習近平は「シー・チンピン」でなく「しゅう・きんぺい」でお願いします

2021年06月30日(水)15時20分
周 来友(しゅう・らいゆう)
習近平の読み方

HISAKO KAWASAKI-NEWSWEEK JAPAN

<書籍や雑誌、テレビ番組の字幕で「中国人名の現地読み(中国語読み)」がよく使われている。リベラル派による配慮なのかもしれないが、できればやめてもらいたい>

最近、散歩中のご近所さんに会って長々と立ち話をしていた際に、少々困ったことがあった。

浅田次郎の中国歴史小説が話題に上ったのだが、彼女がどの登場人物のことを話しているのか、さっぱり分からなかったのだ。

「ヅチンチヨンに攻め込んだリイヅチヨンが......」

何度か聞き返して、ようやく「紫禁城に攻め込んだ李自成(明朝を亡ぼした農民反乱軍の指導者)」のことだと分かった。

日本の書籍や雑誌、テレビ番組の字幕で「中国人名の現地読み(中国語読み)」がよく使われている。ニューズウィーク日本版でも例えば、習近平に「シー・チンピン」とルビが振られているが、あれである。

日本の中国歴史小説が大好きな私は、これまで井上靖や水上勉、陳舜臣らの作品を数多く読んできたが、ひと昔前なら人名に日本語読みのルビを付けていた歴史小説にも、いつしか中国語読みが散見されるようになった。

ところが、この現地読み、在日中国人にとっては悩みの種だ。片仮名の表記を読んでも中国語の漢字を連想することが難しく、また日本人がそれを口にしても、何を指しているか分からないのである。

漢字にルビならまだいい。先日出演したテレビ番組では「第2のファン・ビンビン騒動」が取り上げられたが、字幕やスタジオの解説ボードに書かれた名前は片仮名のみ。漢字は一切使われなかった。

ご存じない方のために説明すると、中国で現在、ジェン・シュアンという女優に巨額脱税疑惑がかけられており、それが3年前にあった女優ファン・ビンビンの脱税事件とそっくりなのだ。

鄭爽(ジェン・シュアン)と范冰冰(ファン・ビンビン)。2人とも超の付く有名人で、在日中国人たちも漢字を見ればすぐにピンとくる。ところが片仮名だけだと、頭の中が「?」で埋め尽くされてしまう。

この事件はネットニュースでも片仮名だけの表記が多く、「人名表記が意味不明」だと中国人の間で話題になった。

片仮名のように音をそのまま表現する表音文字を持たない中国人は、日本人の名前の漢字を中国語で発音する。

逆もしかりで、母音も子音も少ない日本語で中国語の音を表現するのは至難の業だ。実際、中国人がパッと聞いて分かる片仮名表記はほとんどないだろう。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン国会議長、米国との協議実施を否定

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、3月は‐16.3 原油高

ワールド

米エネルギー長官、戦略石油備蓄の追加放出は「可能性

ワールド

イランとの予備的協議は「非常に良好」、イラン側も和
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 3
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に困る」黒レースのドレス...豊胸を疑う声も
  • 4
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 5
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 8
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    100年の時を経て「週40時間労働」が再び労働運動の争…
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story