最新記事
犯罪

「これだからウクライナ人支援は嫌なのです」...避難民に届く怪しいメッセージの狙いとは? SNS詐欺の実態に迫る

FLEEING WAR AND SCAMS

2024年9月26日(木)14時38分
ケイト・プラマー(調査報道担当)
ハルキウの激戦地に近い村から避難する住民

ハルキウの激戦地に近い村から避難する住民(7月16日) AP/AFLO

<戦争に追われたウクライナ避難民のための支援策が、詐欺師たちに狙われている>

ロシアとの戦争から逃れてアメリカを目指すウクライナの人々が、政府の人道支援イニシアチブを悪用しようとする詐欺師に狙われている。

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、米バイデン政権は同年4月に、ウクライナからの避難民の入国許可プロセスを簡素化する「ウクライナのための結束(U4U)」プログラムを発表。個人や非営利団体などの支援を得て申請すると2年間、アメリカに一時滞在できるようになった。


だが本誌の取材に対し、3人のウクライナ人が、ソーシャルメディアを使ってU4Uを悪用しようとする試みを実際に見たと語っている。

U4Uでは政府から支援者への財政面のサポートはなく、申請者を金銭的に支える義務は支援者が負うと考えられている。米国市民権・移民業務局(USCIS)は支援者の身元調査とセキュリティーチェックを行い、申請者が搾取されないよう支援者に十分な経済的能力があることを確認している。

しかし、一部のウクライナ人は支援者を見つける前に、支援の見返りとして、時には数千ドルを要求する連絡を受けている。

本誌が話を聞いた人々は、そのようなメッセージを送ってきた人物に金銭を支払ったことはないが、自分たちは搾取されていると感じている。一方で、ある情報源は、カネ儲けのためではなく、あくまでもウクライナ人を助けたいのだと主張する。

USCISの広報担当者は本誌の取材に、U4Uをめぐる詐欺行為や、職員を装う人に注意するように呼びかけていると説明した。

さらに、正規の職員がソーシャルメディアを通じて個人に接触することはなく、オンラインで支援の見返りを要求されたり、本人確認書類を求められたりした場合は警戒するように、とも指摘している。

USCISによると、ソーシャルメディアの偽アカウントや成り済まし詐欺の事例は国土安全保障省の監察総監室に報告され、さらに調査が行われる。

USCISの統計では、U4Uに申請してアメリカ行きの航空券を予約する許可を受けたウクライナ人は約26万6000人に上る。実際、既に21万5000人近くがアメリカに到着して手続きを行っている。さらに22年3月以降、U4U以外でアメリカに入国したウクライナ人は41万2000人を超える。

「支援者」に脅迫される例も

産業機械整備士のセルヒー・アントノフ(34)は障害のある妻、18歳の娘、9歳の息子を連れて、戦闘の前線であるドネツク地方から22年10月にチェコへ避難した。しかし彼は、アメリカへの移住は「自分たちの夢」だと語る。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や

ワールド

アングル:歴史的美術品の盗難防げ、「宝石の指紋」を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中