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「ロシアは勝てないが、ウクライナも勝てない」──「粘り勝ち」狙いのプーチンと戦争が終わらない理由とは?

Slim Chances for Peace

2023年2月1日(水)12時30分
デービッド・ブレナン(本誌米国版外交担当)

2023年1月、ドネツク州での攻撃の余波 Alexander Ermochenko-REUTERS

<持久戦に持ち込めば勝ち目があると見込むプーチンだが、西側諸国の「支援疲れ」は見られない。他方、ウクライナのNATOとEU加盟も頭の痛い問題>

ロシアのウクライナ侵攻が始まって11カ月。8年も続く紛争の最終段階でもあるこの侵攻が、近いうちに終わることはまず期待できない。

昨年2月24日の侵攻開始後まもなく停戦交渉が始まったが、双方の要求に決定的な隔たりがあり協議は難航を極めた。しかもウクライナでは、首都キーウ(キエフ)郊外からロシア軍が撤退した後、むごたらしい住民虐殺の証拠が見つかると、徹底抗戦を求める声が一気に高まり、4月までに交渉は完全に頓挫した。

戦争を終わらせるには交渉が必要なことは双方とも認めるが、ウクライナとロシアの現実認識は大きく懸け離れている。ウクライナが望むのはロシア軍の全面撤退と領土の完全回復、賠償金の支払い、ロシアの戦争犯罪が国際法廷で裁かれること、NATO加盟によりロシアの軍事的な脅威から自国が守られることだ。

一方、ロシアは部分的に占領したウクライナの4地域の「併合」を正式に承認するよう国際社会に求めるとともに、ウクライナの「非武装化」と「非ナチス化」を引き続き作戦目標に掲げている。

ウクライナは昨年11月、10項目から成る和平案を提示し、2月に国連を巻き込み「平和サミット」を開催することを提案した。いずれも既にロシアは拒否しているが、ウクライナはこの2案に西側の主要国の賛同を取り付け交渉の枠組みを設定したい考えだ。

もっともロシアは春に大規模な攻勢を開始するとみられ、ウクライナも反撃の準備を進めている。どちらも交渉のテーブルに着くどころではなく、「長丁場になると覚悟すべきだ」と、イボ・ダールダー元米NATO大使はクギを刺す。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はロシアのウラジーミル・プーチン大統領に「腹を割った会談」を呼びかけたこともある。だがゼレンスキーの顧問ミハイロ・ポドリャクの見方は厳しく、プーチンは「責任を逃れたいだけで、交渉などする気はない」と吐き捨てている。

ウクライナが和平の条件として挙げた10項目には、ロシアが占領したザポリッジャ原子力発電所周辺を安全保護区に指定することや、捕虜と連行された人たちの解放などが含まれる。加えてNATOに代わる新たな安全保障の枠組みづくりも提案している。

これらの要求は「ウクライナだけでなく世界全体にとっても非常に重要なものだ」と、ウクライナ内務省の顧問を務めるアントン・ゲラシュチェンコは本誌に語った。

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