最新記事

ウクライナ戦争

ロシアが誇る最新鋭T-14戦車ついに戦場へ? だが現場が配備を「嫌がっている」理由

What Are T-14 Armata Battle Tanks? Russian Vehicles Plagued With Problems

2023年1月27日(金)18時26分
エリー・クック
ロシア軍T-14戦車

モスクワでの軍事パレードに参加したT-14(2019年5月) Shamil Zhumatov-Reuters

<かつてイギリス陸軍情報部高官からも「最も革新的な戦車」と評されたが、お披露目パレード当日からトラブルが続く「いわくつき」でもある>

ロシアの戦車「T-14アルマータ」は、かつて英陸軍幹部から「10年に1度の最も革命的な戦車」というお墨付きをもらったことのある最新鋭設計だ。ところが、英国防省が1月19日に述べたところによると、ウクライナでロシア軍を率いる指揮官たちは、この戦車が投入されることに乗り気ではないらしい。最大の問題点は、これまでトラブルが続出してきたことによる信頼性の低さにある。

■【動画】初公開当日から最新鋭T-14戦車を襲ったトラブル/ウクライナ向けとみられるT-14を捉えた衛星写真

英国防省が1月19日に投稿したツイートによれば、ロシアは、新型の主力戦車(MBT)T-14の第一陣をウクライナに投入するかどうかを、検討している模様だ。英国防省が投稿した衛星画像は、「ウクライナ向けの配備準備と関連する」ロシア南部の施設を上空から写したものだが、そこにはT-14が2両写っている。

英国防省は、同日午前(現地時間)に公開した報告書でも、ロシアがT-14を戦闘に初めて配備するべく準備している可能性に目を向けている。だが、英国防省のツイートによると、ウクライナの戦場にいるロシア軍は、「T-14の状態があまりにも悪いため、そのトランシェ1(第1グループ)が配備されることに乗り気ではない」ようだ。

ロシア軍指揮部がT-14に関して消極的な反応を示したとされる詳細について、英国防省は確認ができていないものの、度重なる遅延を含むこれまでの様々な問題がその理由として考えられるとしている。

「T-14」とはどんな戦車なのか

T-14はロシア製の最新主力戦車であり、遡ること2015年に首都モスクワで行われた軍事パレードで初公開された。2019年に試運転が始まり、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は2021年、最初の「試験的な(pilot)」トランシェが翌年に納入される予定だと発表した。

流出した資料によると、ロシアがT-14を開発したことに、英国軍は懸念を強めていたようだ。英紙テレグラフが2016年に引用した、英陸軍情報部高官による報告資料には、T-14について、「一世代に一度の、最も革命的な戦車と称される」にふさわしいと書かれている。

「アルマータはまさしく、ここ半世紀における戦車設計で最も革命的な一歩を踏み出したことを示している」。報告資料にはそう書かれている。この高官の名前は公表されていない。

この報告資料が着目したのは、T-14に搭載された、遠隔操作が可能な最新式の無人砲塔の設計だ。この砲塔は、125mmの滑腔砲を搭載することができ、高度に自動化されているほか、高性能の対戦車ロケットから車体を防御できる装甲が使われている。さらに兵器を操作する砲手は砲塔内ではなく、車体内の装甲が施された「カプセル」内で守られる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア国営TV、米有権者をトランプ氏に誘導か=米情

ワールド

アングル:ハリス対トランプ」TV討論会、互いに現状

ワールド

SNS、ロシア影響下疑惑の投稿にほぼ未対応

ワールド

アングル:サウジに「人権問題隠し」批判、eスポーツ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 2
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 3
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 4
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻…
  • 5
    川底から発見された「エイリアンの頭」の謎...ネット…
  • 6
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 7
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 8
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 9
    世界に400頭だけ...希少なウォンバット、なかでも珍…
  • 10
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 1
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つの共通点
  • 4
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 5
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 6
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 7
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 8
    無数のハムスターが飛行機内で「大脱走」...ハムパニ…
  • 9
    再結成オアシスのリアムが反論!「その態度最悪」「…
  • 10
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中