最新記事

自然

渡り途中のカイツブリ1500羽が地面にダイブ死(米ユタ州)

Freezing Utah Storm Makes Baffled Birds Kill Themselves

2022年12月15日(木)20時41分
アリストス・ジョージャウ

地面に墜落してユタ州職員に保護されたハジロカイツブリ UTAH DIVISION OF WILDLIFE RESOURCES

<冬を米南部や中米で過ごすため北から飛んでくるハジロカイツブリは本来、湖や池に着水するはずなのに>

激しい冬の嵐に見舞われた米ユタ州では、渡りの途中の水鳥が数多く地面に激突するという事態が起きている。州の野生生物資源局(UDWR)が明らかにした。

けがをしたり命を落とすケースも多い。ユタ州では2011年12月にも嵐の中で多数のハジロカイツブリが地面に墜落、少なくとも1500羽が死亡した。

ハジロカイツブリはアメリカ北部やカナダ南部で繁殖し、冬は暖かいアメリカ南部やメキシコで過ごす。夏の終わりに渡りを開始し、途中でユタ州に立ち寄ることがある。

水面からでないとうまく飛び立てないため、ハジロカイツブリは通常、湖や池を探して地上に降りてくる。だが嵐になると地面に水がたまるので、湖か池に着水するつもりが勘違いで固い地面に落ちてきてしまうのかも知れない。

UDWRがフェイスブックの公式アカウントに投稿したところによれば、州南西部のアイアン郡やワシントン郡の開けた場所で12日の夜、複数のハジロカイツブリが地面に墜落したという。

UDWRによれば、ハジロカイツブリが地面に墜落する事例は毎年のように起きている。だが多数の鳥が同時にというのは比較的珍しいという。また、地面に激突してけがをしたり死んだりする鳥もいるが、全体の生息数に大きな影響を及ぼすほどの被害が出ることは基本的にはないそうだ。

中継地での環境変化の影響を受けやすい

11〜12日にかけてユタ州では大雪や強風、豪雨、寒波を伴う強い低気圧の移動に伴い、広い範囲で注意報や警報が出ていた。米商務省気象局は州北部の一部地域でさらなる降雪が予想されるとして、注意報を14日まで延長した。

ハジロカイツブリは全長30〜35センチほどの水鳥で、北米や中米、ユーラシア地域、アフリカに生息している。

北米に生息するカイツブリの中で最も数が多い種類でもある。生息数は安定しているが、渡りの際にはカリフォルニア州のモノ湖とユタ州のグレートソルト湖という2つの湖が非常に重要な中継地となっており、その環境の影響を受けやすい。

水鳥学会の機関誌には昨年12月、モノ湖におけるハジロカイツブリの生息数調査(1996〜2018年)に関する研究が発表された。例年、モノ湖には100万羽を超えるハジロカイツブリが訪れる。ところが2014年と2015年には「劇的な減少」が見られ、その数は40万羽を下回ったという。同じ時期に主食であるブラインシュリンプが少なかったせいではないかと研究者は見ている。渡ってくるハジロカイツブリの数が少ない状態はその後3年間続いたという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中