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「みんなトラウマになる」「この臆病者を見ろ」「どこの国境でも人種差別」...ウクライナ難民ルポ

SEEKING SANCTUARY

2022年3月18日(金)18時40分
ダイアン・ハリス、ファトマ・ハレド、ハレダ・ラーマン

このビザなし滞在が可能だからこそ、みんな国外へ逃れたくて国境地帯に集結してくる。

車の渋滞の列は、時に何十キロにも及ぶ。鉄道やバスのターミナルには、既に人があふれている。だから多くのウクライナ人は、国境の近くまで来るとバスを降り、歩いて検問所まで行く。片方の手でわが子の手を引き、もう片方の手でスーツケースを引きながら。

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国境は簡単に越えられない

そもそも国境へたどり着くのが大変だ。

「すごくひどい状況だった」とAP通信に語ったのは、ナイジェリア人の留学生プリスカ・バワ・ジラ。東部の主要都市ハリコフを脱出したものの、「あちこちで次々と爆発が起きるから、そのたびに走って、シェルターに隠れた」と言う。

西部のリビウから隣国ポーランドに逃れたナタリア・ピブニウクは、大勢の人が他人を押しのけて列車に乗り込もうと争っていたと語る。

それは「肉体的にも精神的にもきつい」経験で、「みんなのトラウマになる」。彼女はそうAP通信に語っている。

しかも国境は簡単には越えられない。

UNHCRによれば、3月11日時点で約150万人と最も多くのウクライナ難民を受け入れているポーランドに入国するには、極寒のなか最長60時間も待たなければならない。モルドバは24時間、ルーマニアは20時間だ。

ウクライナ在住の外国人だと、さらに長く待たされる。しかも入国できる保証はない。

難民の大半は女性と子供、そして高齢者だ。ウクライナでは国民総動員令が出されており、18~60歳の男性の多くは出国を禁じられている。ユニセフ(国連児童基金)によれば、10日時点で国外退避した約230万人中、100万人超は子供だ。

アメリカ人でフリージャーナリストのマニー・マロッタは、現地の様子を取材するために2月半ばにウクライナ入りしたが、戦闘が始まったため、20時間以上も歩いてポーランドに逃げ戻った。

彼によれば、国境地帯ではウクライナ軍の兵士たちが、若い男性が出国しないようチェックしている。家族から引き離し、家に戻って国を守るために戦ってくれと説得する。

「子供たちが理由を理解できないまま、父親は家族から引き離されて連れて行かれる」と彼は言う。

「ある男性が、妻と一緒にいたいと主張する場面に遭遇した。すると兵士は群衆のほうを向いて『この臆病者を見ろ。彼はウクライナのために戦おうとしていない』と叫んだ。群衆の間からは男性に対して非難のブーイングが起き、男性は結局、兵士に付いて行った」

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