最新記事

米社会

子供へのワクチン計画が進行中だが、30%もの親が「様子見」と判断

MANY PARENTS SHUN VACCINE

2021年11月5日(金)12時41分
アダム・ピョーレ
子供のワクチン接種

JUANMONINO/GETTY IMAGES

<米バイデン政権が5~11歳の子供へのワクチン接種計画を発表。30%の親がなお躊躇するなか、義務化の動きが始まった>

アビ・ハモンドは30代で2児(7歳と11歳)の母。フィットネスのインストラクターで、自ら教室を開いている。政治的な立場は、自称「中道派」だ。民主党支持者の多い東部コネティカット州に住み、子供には必要な予防接種を全て受けさせてきたし、毎年のインフルエンザワクチンも欠かさない。

でも、新型コロナウイルスのワクチンは別だ。米FDA(米食品医薬品局)が11歳以下への接種を承認しても、わが子に受けさせるかどうかは決めかねている。

「すごく迷っている」とハモンド。「最初のうちは、(新型コロナは)『子供には心配ない』と聞かされていた。それが今になって、子供にもワクチンを打つという。『子供が感染すると非常に危険だから』って。ちょっと待ってよ。専門家の話がころころ変わったら、混乱しちゃう。なんだか、すごく政治的ね」

10月20日、ジョー・バイデン米政権はFDAの承認を見越して、小児科医院や病院などで子供にワクチンを接種する計画の詳細を発表。それに先立ち、各州知事には11月上旬までに5~11歳の子供にワクチンを接種する準備を始めるよう指示した。

関係当局によれば、政府は既に米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した子供向けのワクチンを6500万回分購入している。FDAの許可が下りれば、対象となる5~11歳児(約2800万人)全員に接種できる量だ。なおFDAの諮問委員会は10月26日、この年齢層の子供にファイザー/ビオンテックのワクチン接種を推奨することを賛成多数で決めている。

情報が多すぎて混乱している

だが親たちは懐疑的だ。カイザー・ファミリー財団の調査によると、5~11歳の子を持つ親の32%が、わが子へのワクチン接種は「しばらく様子を見る」と答えている。理由はさまざまで、ワクチンの安全性に不安を抱く親もいれば、政府は新型コロナの子供への影響を誇張していると考える親もいる。少数ながら、強硬な「反ワクチン派」もいる。そして多くの人が、ハモンド同様に、情報が多すぎて混乱している。

このパンデミックでは、当初から大量の情報が飛び交っていた。感染予防の対処法をめぐる科学的に不確かな情報や、公衆衛生当局による矛盾した発表、陰謀論者や政界の日和見主義者による誤情報や嘘。

新型コロナの流行から約2年がたち、ウイルスに対する医学的な理解は飛躍的に進んだが、一般人の理解は追い付いていない。この混乱を収拾できるかどうかが、社会を通常に近い状態に戻せるか、緊急事態やロックダウン(都市封鎖)を何度も繰り返すかの分かれ目になるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

伊プラダ第1四半期売上高は予想超え、ミュウミュウ部

ワールド

ロシア、貿易戦争想定の経済予測を初公表 25年成長

ビジネス

テスラ取締役会がマスクCEOの後継者探し着手、現状

ワールド

米下院特別委、ロ軍への中国人兵参加問題で国務省に説
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中