最新記事

「コロナワクチンを打つとEDになる」「睾丸が腫れる」は本当か

Your Penis, COVID and Vaccines

2021年10月7日(木)18時17分
アイマン・イスマイル(スレート誌)
カウンセリング

BUSINESS/ISTOCK

「ワクチン接種で睾丸が腫れ、勃起不全になる」という人気ラッパー「ニッキ―・ミナージュ」のツイートに科学的証拠はないが......

人気ラッパーのニッキー・ミナージュが9月13日、あるツイートで物議を醸した。2200万人のフォロワーに向けて、ファッションイベント「メットガラ」に出席するための新型コロナワクチン接種を拒否し、まずワクチンについてもっと「研究」すると伝えたのだ。

彼女はこうも付け加えた。「トリニダードにいる私のいとこはワクチンを打たないそう。友人がワクチンを接種してインポテンツ(性的不能)になったから。その友人は睾丸が腫れた。結婚を数週間後に控えていたが、彼女に結婚式をキャンセルされた」

ミナージュの投稿はワクチンをめぐる誤情報と拡散の典型例として、嘲笑の的になった。ワクチンがテストステロンの産生を妨げたり、睾丸に炎症や痛みを起こしたり、勃起不全を引き起こしたりする証拠はない。男性の「性の健康」に関する噂は新型コロナワクチン絡みの陰謀論によくある説の1つであり、人々のワクチン接種の意思決定に影響を与えている。

この手の噂はワクチンではなく、新型コロナ自体が「性の健康」に悪影響を与える可能性がある、という真に憂慮すべき問題を隠蔽することにもつながる。スレート誌のアイマン・イスマイルが泌尿器科医のアーロン・スピッツに最新の科学的知見を聞いた。

――現時点で分かっていることは?

新型コロナがもたらす明確な問題があるという前提で、生殖能力についての研究が行われている。約5%のケースでは、精子の数の減少や運動性の低下など、生殖能力に悪影響を及ぼすことが分かっている。この影響が長く続くかどうかは分からない。

もっと大きな割合、おそらく20%程度の男性はテストステロンの減少と、精巣(睾丸)にテストステロンと精子を作らせるために脳下垂体が分泌するホルモンの増加が指摘されている。精巣に問題があると、脳下垂体の「信号」はさらに増える。つまり、これらの男性は精巣が傷ついているということだ。

一方、もともと精巣の機能に問題があり、テストステロンが減少していた男性が、新型コロナに感染しやすいという可能性もある。要するにニワトリが先か卵が先かの問題だ。正解はまだ出ていない。

――新型コロナはペニスや勃起に強い影響を与えるか?

テストステロンが減少すれば、勃起が困難になる可能性はある。勃起にはペニスへの十分な血流が必要であり、それにはテストステロンが欠かせないからだ。ただし、新型コロナの影響については明確なデータがまだない。

むしろ、新型コロナによる不安やストレスが勃起不全の原因である可能性が高い。新型コロナは人間にパニックを起こさせ、肉体的にも経済的にも大きなストレスを与える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 9
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中