最新記事

中東

アフガニスタン、90日以内に首都陥落も タリバン猛攻で=米当局者

2021年8月12日(木)08時09分
アフガン・ファラーをパトロールするタリバン兵士

米国防当局者は、アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンが勢力を拡大する中、首都カブールが90日以内に陥落する恐れがあるとの認識を示した。写真はアフガン・ファラーをパトロールするタリバン兵士。8月11日撮影(2021年 ロイター/Stringer)

米国防当局者は11日、アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンが勢力を拡大する中、首都カブールが90日以内に陥落する恐れがあるとの認識を示した。米情報機関の分析を基に述べた。

月末の駐留米軍撤退の完了を控え、タリバンは猛攻を続けており、欧州連合(EU)高官によると、タリバンはアフガン領土の65%を支配。11州都がすでに制圧、もしくは制圧の瀬戸際にあるという。11日には北東部バダフシャン州の州都ファイザバードが制圧され、8つ目の州都陥落となった。

米国防当局者は、タリバンによるカブール制圧の可能性について「不可避の結果ではない」とも述べ、アフガン治安部隊が抵抗を強めれば形勢を逆転できると強調した。

米国務省のプライス報道官はタリバンによる攻撃について、米国とタリバンによる2020年和平合意の精神に反していると指摘。

タリバンが「恒久的かつ包括的な停戦」につながる和平交渉にコミットしたにもかかわらず、「戦場での勝利を模索していることがあらゆる兆候で示されている」と批判した。

また「州都を攻撃し、民間人を標的にするのは合意の精神に反する」と述べた。

国連によると、民間人の死者は過去1カ月間で1000人を超えている。タリバンは民間人を標的にはしていないとして、独立した調査を求めている。

ホワイトハウスのサキ報道官は、タリバンによるカブール制圧の可能性についてコメントを控えた上で、「アフガン国内における治安情勢の悪化を注視している」とし、米軍撤収計画に変更はないと強調した。

さらに、アフガン国軍が反撃に必要な支援を米国から受けているという認識を改めて示し、「反撃する政治的意志や一丸となる能力があるか」はアフガンが決定する必要があると述べた。

カタールの首都ドーハでは、アフガン和平に関する協議の行き詰まりを打開しようと、米国や中国、ロシアなどの代表がタリバンとアフガン政府の交渉担当者と会談した。

プライス米国務省報道官は、和平協定の必要性について国際的な合意作りに取り組んでいると述べた。タリバンはタジキスタン、ウズベキスタン、イラン、パキスタン、中国との国境付近を制圧しており、地域の安全保障を巡る懸念が高まっている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、南ア・印・ブラジル首脳と相次ぎ電話協議

ワールド

中欧向けロシア原油が輸送停止、ウクライナが輸送管攻

ワールド

トランプ氏「紛争止めるため、追及はせず」、ゼレンス

ワールド

中国首相、消費促進と住宅市場の安定を強調 経済成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する現実とMetaのルカンらが示す6つの原則【note限定公開記事】
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 7
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 8
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 9
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 10
    あまりの猛暑に英国紳士も「スーツは自殺行為」...男…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中