最新記事

米戦略

「台湾に関わると米中大戦になる」米国防総省職員がバイデンに公開書簡

Pentagon Insider Warns Biden Against 'Major War' With China in Open Letter

2021年6月25日(金)22時41分
ジョン・フェン
人民解放軍の実弾演習(5月22日、安徽省)

「そしてアメリカが負ける』?(写真は人民解放軍の実弾演習。5月22日、安徽省) cnsphoto/REUTERS

<アメリカの台湾政策を批判し中国共産党系のタブロイド紙に意見記事を寄稿したこの職員は現在、米当局の捜査対象となっている>

中国共産党人民日報系のタブロイド紙「環球時報」に寄稿して内部告発をしたことを理由に、米海軍犯罪捜査局(NCIS)の調査を受けている米国防総省の職員が6月23日、ジョー・バイデン米大統領に宛てた公開書簡を発表。台湾に関わると「アメリカが中国との大戦争に巻き込まれるおそれがある」と警告した。

元米海兵隊員で、現在は米国防総省に勤務しているフランツ・ゲイル(64)は本誌に対し、ほかの複数のメディアに掲載を断られたため、「最後の手段として」環球時報に接触したと語った。

ゲイルは24日付の本誌宛てのメールの中で、「(寄稿した記事は)アメリカの外交政策を決定する立場にある人々に向けて書いたものだ」と述べた。4月27日と5月27日に環球時報に掲載された2本の記事の中で、彼はアメリカの台湾政策を厳しく批判している。

彼が特に強く反対したのが、台湾関係調整法(TRA)。1979年に米政府が中国との国交を樹立した(つまり台湾と断交した)後、台湾との関係を維持する上での指針となってきた法律だ。

中国は台湾に対して「正当な権利がある」

ゲイルは、台湾問題をめぐって中国との衝突が起きればアメリカが負けることになり、多くの命が失われるとして、米台関係を継続することに反対を表明している。彼はまた、中国には台湾の主権を主張する正当な権利があり、台湾を支配下に置くためなら「あらゆる手段を」取るだろうとしている。この点については、ゲイルは中国政府と同じ意見だ。

「台湾関係調整法は制定当時から、アメリカを中国との戦争へと向かわせてきた」とゲイルは本誌宛てのメールで述べた。1979年にデラウェア州選出の民主党上院議員だったバイデンは、同法に賛成票を投じていた。

ゲイルは23日に発表したバイデン宛ての公開書簡の中で、環球時報に意見記事を寄稿したことを理由に、米国防総省から処罰を受けたと示唆した。

「予想はしていたが、私は機密情報へのアクセス権限を一時停止されるという代償を払い、現在は防諜捜査の対象になっている」と彼は書いている。

米海兵隊のアンドリュー・ウッド大尉は、本誌に寄せた声明の中で、問題の意見記事は「適切な承認プロセス」を経ていなかったと述べた。

「ゲイルが表明した見解は個人の見解であり、米海兵隊の見解を代表するものではない」とウッドは説明。また彼によれば、ゲイルは現在、米海兵隊の科学技術分野の顧問を務めているという。現在進められている捜査については、ウッドからも米国防総省のジョン・サプル報道官からも、これ以上のコメントはなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も 
  • 4
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 7
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 8
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    【独占】高橋一生が「台湾有事」題材のドラマ『零日…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中