最新記事

中国

中国の「反外国制裁法」と問われる日本の覚悟

2021年6月12日(土)19時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
習近平国家主席

習近平国家主席 Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

6月10日、中国で「反外国制裁法」が制定された。外国から制裁を受けた際の報復制裁を規定したもので、制裁に協力した者も対象とする。日韓などの対米追随を牽制することになり、日本の及び腰が加速しそうだ。

反外国制裁法の成立過程

全人代(全国人民代表大会)常務委員会は、6月10日「中華人民共和国反外国制裁法」を制定し、その日の内に習近平国家主席が署名し実施されることとなった。

全人代常務委員会は6月7日から10日まで開催されたが、反外国制裁法の制定に関しては、2020年11月に習近平が中共中央総書記として「中共中央全面依法治国工作会議」を開催した際にその方向性をすでに指摘していた。

その方向性に沿い、今年3月に開催された全人代や全国政治協商会議などで、「反制裁、反干渉」を中心とした法律を今年中に制定すべきだという意見が提案されていた。新疆、チベット、香港、台湾・・・など、すべての中国の内政干渉を口実にして中国に対して制裁を加えたり、特殊な中国公民(たとえば新疆ウイグル自治区にいる公民など)に対して不公平で「いわれなき」不平等な行動(=ウイグル綿花の不買といった行動)を取ることなどに対して、中国は断固とした報復措置を取ることができるような法的根拠を制定しなければならないといった意見だ。

それを受けて全人代常務委員会が立案審議を重ねてきたものである。同法は16条で構成されている。

6月11日から開催されているG7首脳会談に合わせているようにも見えるが、バイデンが大統領に当選して以来、中国が練ってきた戦略で、バイデン大統領が国際社会に戻ってきて同盟国らと連携を強めることを警戒して手を打ったものと見る方がいいだろう。

どのような罰則が科せられるのか?

公表された「反外国制裁法」の原文によれば、ざっくりとまとめた場合、主に以下のような措置が成されると考えられる。

●中国が外国から不当な制裁や内政干渉を受けた時は、中国への制裁を決定・実行した関係者(個人や組織)やその親族を中国政府がリスト化して「報復リスト」を作成し、罰則を与えることができる。

●罰則の内容は主として「入国拒否や国外追放」、「中国国内の財産凍結」あるいは「すべての中国企業との取引禁止」(筆者注:すべての中国企業に対して、当該個人または組織との取引を禁じる)などが含まれている。これらの対抗措置は国務院の関連部門によって決定される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中