最新記事

ヘイトクライム

絶えないアジア人差別 ドイツでは?

2021年5月18日(火)16時30分
モーゲンスタン陽子

ドイツ在住アジア系の49%がパンデミック中に差別を受けたと回答した REUTERS/Fabrizio Bensch

<ドイツでは、アジア人に対する差別はほとんど調査の対象になってこなかったが、今回、ベルリン自由大学などが調査をおこなった>

アメリカでは相変わらずアジア人に対する差別・暴力が絶えない。ドイツではしかし、全国を揺るがすようなアジア人へのヘイトクライムは今のところ聞こえてこない(数十年前には何件かあった)。昨年のBLM運動はドイツでも大きく注目され、以後ドイツ国内の黒人に対する研究が行われたり議論が交わされたりしたが、Stop Asian Hateのほうは、こちらでは国内問題としてはそれほど注目を集めていないようだ。

実はドイツでは、アジア人に対する差別はほとんど調査の対象になってこなかった。しかしこのほど、ベルリン自由大学、フンボルト大学ベルリン、ドイツ統合移民研究センター(DeZIM)などの共同研究プロジェクトにより、少なくとも昨年の新型コロナウイルスのパンデミック発生以来のアジア人差別が調査され、それらの結果がMEDIENDIENSTにより数字としてまとめられた(同プロジェクト内の複数の調査をまとめたものなので、対象者は質問により異なる)。

「アジア人はドイツでのコロナパンデミックの急速な拡大に責任がある」

2020年11月、DeZIMは「危機の時代の社会的結束 ドイツのコロナパンデミックと反アジア人種差別」で、アジア系とそれ以外の人々を含めた4,500人をオンライン調査した。

それによると、自らをアジア系ではないとする803人の回答者の15.2%が「アジア人はドイツでのコロナパンデミックの急速な拡大に責任がある」と答えた。新型コロナウイルスが中国で発生したと広く考えられていることが背景にある。

asian20210517b.jpg

自らを白人とみなす835人に対する調査では、「ドイツ人とアジア人は、たとえ親しい友人であっても、互いに完全に理解し合えることは決してない」「アジア人は発展途上の文化から来ており、したがってほとんどのドイツ人ほど成功できていない」などのステイトメントにはそれぞれ90%前後が反対しているものの、「ここで暮らすアジア人は、ドイツでの生活の成功に必要な、異なる価値観とスキルを子供たちに教えている」には83%が不賛成で、アジア人がドイツ社会に適応する努力を怠っていると見なしているようだ。

アジア系とは、東アジア、東南アジア、南アジアのさまざまな国を指すが、おもにベトナム系、中国系、インド系が多い。アジア系移民と呼ばれる人はドイツに110万人おり、うち70%が移住者、30%がドイツ生まれと言われる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBが金利据え置き

ビジネス

FRB、5会合連続で金利据え置き トランプ氏任命の

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ワールド

銅に50%関税、トランプ氏が署名 8月1日発効
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中