最新記事

軍事クーデター

ミャンマー軍がクーデター、スー・チーらの身柄拘束 与党は抵抗を呼びかけ

2021年2月1日(月)17時30分

ミャンマー軍は、「選挙不正」を受けてアウン・サン・スー・チー国家顧問(写真)や与党幹部らを拘束したと発表した。インドで1月27日撮影(2021年 ロイター/Thar Byaw)

ミャンマー国軍は1日、与党・国民民主連盟(NLD)を率いるアウン・サン・スー・チー国家顧問、ウィン・ミン大統領ら幹部を拘束し政権を奪取した。

軍は傘下のテレビ局を通じて声明を発表し、「選挙の不正」を受けてスー・チー氏らNLD幹部を拘束したと主張。期間を1年とする「非常事態宣言」を発令し、ミン・アウン・フライン国軍司令官が国家権限を掌握したとした。

1日には、NLDが地滑り的勝利を収めた昨年11月8日の総選挙後初めて、議会が招集される予定だった。

2011年の民政移管後2度目となる11月の総選挙でNLDは得票率83%で圧勝。これを受け、政府と国軍の対立が激化しクーデターの懸念が強まっていた。

国軍は非常事態宣言を発出する声明で、選挙管理委員会が有権者リストに関する苦情に対応せず、議会の新たな会期延期への要請を拒否し、選挙結果に不満がある団体の抗議も突っぱねたことを理由に挙げた。

「この問題が解消しない限り、民主主義への道筋が阻害されるだろう。このため、法に則り解消する必要がある」とし、国家主権が脅かされている場合の非常事態に関する憲法の規定を根拠として挙げた。

スー・チー氏は国民に対し、国軍のクーデターを受け入れずに抵抗するよう国民に訴える声明をNLDを通じて出した。「国軍の行動は独裁体制を復活させるための行動だ」とし、「国民にはこれを受け入れずに、国軍のクーデターに対し、心から抗議するよう訴える」と述べた。

首都ネピドーと最大都市ヤンゴンは電話が不通となっており、国営テレビ局は放送を停止している。ヤンゴンでは食料や日用品を買いだめるために人々が市場に殺到し、銀行のATMの前にも行列ができている。

ヤンゴンの住民らによると、市庁舎には兵士が配備され、NLDの本部では携帯電話のデータ通信や通話に障害が起きている。インターネット監視サービスのネットブロックスによると、インターネットもつながりにくくなっている。

NLDのミョー・ニュン報道官はロイターの電話取材に、スー・チー国家顧問、ウィン・ミン大統領、その他幹部が1日未明に「拘束された」と述べた。「国民には早まった反応は控え、法に則り行動することを求める」と語り、自分自身も拘束される見込みだと続けた。その後、報道官とは連絡が取れなくなった。

ある議員はフェイスブックに地方議員が拘束されている様子を撮影したとみられる動画を投稿。地方議員の夫は泣いている子供を連れ、入口の外に立つ軍服の男性に懇願している。

米ホワイトハウスのサキ報道官によると、バイデン大統領はスー・チー氏らの拘束について説明を受けた。

ブリンケン米国務長官は声明で「米国は、民主主義や自由、平和、発展を求めるミャンマー国民とともにある。軍部は即時に行動を撤回すべきだ」とした。

国連のグテレス事務総長は、アウン・サン・スー・チー国家顧問らの拘束を強く非難し、国民の意思を尊重するよう軍に要請した。国連のデュジャリック報道官が31日、明らかにした。

オーストラリア政府も「ミャンマー軍部が再び国の支配権を握ろうとしているとの報道を深く憂慮している」とし、不当に拘束されたスー・チー氏らの即時解放を求めた。

加藤勝信官房長官は1日午前の会見で、同日朝にミャンマーの現地大使館からスー・チー氏ら拘束の報告を受けたとし、大使館を通じて詳細な情報を確認中だとした。日本政府としては、当事者が対話を通じて平和裏に問題を解決することが重要と考えており、これまでも関係者に対してその旨を働き掛けてきたところだと説明した。

*内容を更新しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】




ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪、35年の温室効果ガス排出目標設定 05年比62

ワールド

CDC前所長、ケネディ長官がワクチン接種変更の検証

ビジネス

TikTok合意、米共和党議員が「中国の影響継続」

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中