最新記事

東南アジア

インドネシア、イスラム過激派壊滅作戦を延長 長期化で民間人を誤認殺害との報道も

2020年7月5日(日)19時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

こうした状況の中、6月初旬に2人の一般人が銃撃を受けて死亡する事件が起き、治安部隊の関与が取りざたされる事態となっている。主要メディア「コンパス」は目撃者の話として「ティノンバラ作戦」に参加している治安部隊メンバーが一般市民である37歳と18歳の男性を銃撃し死亡させた、と報じたのだ。

国家警察は報道を受けて「そのような事案があったことは承知している」としながらも詳細については一切明らかにしようとしていない。現在ポソ警察と対テロ作戦の担当者が現場となった山間部に入り調査を続けているという。

殺害された2人の民間人はポソの北プシシール地区在住とされ、同地区周辺で最近治安当局による対MIT作戦が行われていたことなどから「テロリストと誤認されて殺された」、あるいは「誤った情報に基づく誤認殺害」の可能性も浮上している。

治安部隊が誤認し一般市民殺害の可能性

さらに地元紙などの報道によると6月25日には同州パリジ・ムートン地区で鋭利な刃物で殺害された2人の民間人も発見されている。事件の詳細は依然として不明だが、治安部隊によるMIT殲滅作戦の激化によって民間人の犠牲が増えており、作戦とのなんらかの関連が疑われる状況になっている。

過去にMITも治安部隊のスパイとみなした民間人を殺害したケースがあるものの、民間人殺害が全てMITの犯行と断定することもできず、銃撃された2人の民間人のケースのように目撃情報から治安部隊によるとみられる殺害の例もある。

そうした状況の中でこれまでの傾向として、①民間人殺害に関して犯行の目撃情報がない場合はMITの犯行とみなす②逆に目撃情報がある場合は被害者がMITのメンバーあるいは協力者との情報があった、としていずれも軍や警察に好都合な結果になることが多いとされる。

もちろん、なかには実際にMITによる民間人殺害の例も含まれていることもある。

こうした状況からテロ組織の活動地域であり、そこで治安当局による作戦が展開中の場合、一般住民にとっては厳しい生活環境が続くことになる。


【話題の記事】
・新型コロナのワクチンはいつになったらできる?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

自民党の高市新総裁、金融政策の責任も「政府に」 日

ワールド

自民党総裁に高市氏、初の女性 「自民党の新しい時代

ワールド

高市自民新総裁、政策近く「期待もって受け止め」=参

ワールド

情報BOX:自民党新総裁に高市早苗氏、選挙中に掲げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中