最新記事

朝鮮半島

追い詰められた文在寅 対北朝鮮「融和路線」最大の試練に

2020年6月18日(木)11時06分

韓国の文在寅大統領が政権発足以来推進してきた対北朝鮮融和路線は今、最大の試練に直面している。写真は文大統領(右)と、金正恩委員長の妹・与正氏。撮影日不明(2020年 朝鮮中央通信)

韓国の文在寅大統領が政権発足以来推進してきた対北朝鮮融和路線は今、最大の試練に直面している。脱北者団体による体制批判ビラ散布問題をきっかけに、北朝鮮が南北共同連絡事務所を爆破し、韓国との幾つかの合意破棄を示唆するなど強硬姿勢をあらわにしているためだ。ただ専門家の話では、韓国側が行使できる打開策は乏しい。

南北対立に終止符を打ち、朝鮮半島非核化実現に向けた調停者になると約束して20年に文氏が大統領に就任して以来、両国の関係は最悪の状況にある。一方で米国は、トランプ大統領が個人的に金正恩朝鮮労働党委員長に「秋波」を送っているとはいえ、政府として北朝鮮への圧力を弱める気配は見えない。このため文氏は、北朝鮮からの脅威の高まりと、成果が上がらない国際的な制裁の枠組みの間で、身の置き所がなくなってきた。

実際、北朝鮮は文氏が提唱する南北の交流と協力強化の意義を認めない態度を強めつつある。今週には文政権がひそかに緊張緩和のための特使派遣を模索していたところ、北朝鮮がその動きを暴露して一方的に拒絶し、韓国政府を不快にさせる場面も見られた。

米シンクタンク、スチムソンセンターの韓国問題専門家、ジェニー・タウン氏は、韓国は制裁を継続しながら北朝鮮との関係を改善する何らかの方策を打ち出すことを迫られていると指摘。「長期的な計画もしくは遠大な目標を話し合おうと再び求めるだけではどうにもならず、現実的で、達成する上で国際協力を必要としない措置を見つけ出さなければならない」と語った。

南北交流促進に自身の政治・外交資源の大半を注いできた文氏は今年、両国を結ぶ鉄道建設や、工場団地・観光ゾーンの共同運営を最優先の政策に掲げてきた。しかしほとんど進展はなく、与党内からさえも不満の声が聞こえ始めた。

与党の一部は、米政府や、米国と韓国が非核化や制裁などの北朝鮮問題を調整するために設立した作業部会に非難の矛先を向けている。文氏の元側近の1人は16日に議会で「作業部会は南北関係にとって障害物という側面が強まる一方だ」と発言した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー、EV課税拡大を計画 米テスラ大衆向けモ

ビジネス

アングル:関西の電鉄・建設株が急伸、自民と協議入り

ビジネス

EUとスペイン、トランプ氏の関税警告を一蹴 防衛費

ビジネス

英、ロシア2大石油会社に制裁 「影の船団」標的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中