最新記事

韓国

韓国で自分の子どもを研究論文の共著者にする不正が横行、とネイチャー誌

2019年11月19日(火)18時30分
松岡由希子

高学歴社会の韓国、入学試験の成功を親たちが祈る...... Heo Ran-REUTERS

<韓国で、大学の入学審査において有利に働くよう、実際には研究に関与していない自分の子女を研究論文の共著者に加えるという不正が学界で横行していると、ネイチャー誌が報じた......>

受験戦争が熾烈な高学歴社会の韓国では、大学の入学審査において有利に働くよう、実際には研究に関与していない自分の子女を研究論文の共著者に加えるという不正が学界で横行している。12日、ネイチャー誌オンラインニュースが報じている。

不正が認められた研究論文は24件にのぼる

韓国の教育部(MOE)は、ソウル大学校、延世大学校、釜山大学校など、韓国の15の大学を対象に、子どもが共著者として記載されている研究論文について調査し、2019年10月17日、その報告書を公表した。

今回の調査では、新たに学者9名の不正が確認され、そのうち5名は自分の子女を、1名は知人の子どもを、それぞれ研究論文の共著者として記載していた。研究論文に共著者として記載された後、大学に合格した学生がいることもわかっている。

このような不正は少なくとも2007年頃から行われていたとみられ、不正が初めて明らかとなった2017年以来、不正に関与した学者は合わせて17名で、不正が認められた研究論文は24件にのぼる。

教育部では、これまでに、子どもが共著者として記載されている研究論文794件を確認しており、内容を詳しく精査する方針だ。また、教育部長官は、不正に関与した学者に対して、譴責、国の研究活動への1年間の参加制限、解雇などを含む懲戒処分を検討していることも明らかにしている。この不正により、これまでにソウルの成均館大学校の学者1名が解雇された。

2018年の調査では研究論文82件で学者の子女や親戚が共著者に

韓国では、2017年、ソウル大学で研究論文の共著者に子どもが加えられていることが明らかとなり、教育部が実態調査をすすめてきた。

2018年1月には、過去10年にさかのぼって常勤の大学教員7万人以上が執筆した論文を精査した結果、29の大学で学者の子女や親戚が共著者となっている研究論文82件が見つかった。そのうち子どもが実際に研究活動に関与していたのは39件にとどまっている。

韓国科学技術院(KAIST)のキム・ソヨン教授は「このような不正問題は想像以上に広がっているおそれがある」と懸念を示している。また、成均館大学校のイ・チャング博士は「入学審査プロセスに論文の発表を重視する大学は好ましくない。なぜなら、高校生は研究活動に本格的に関与することはできず、研究論文を発表したという功績が入学審査で悪用されるおそれがあるからだ」と述べ、研究論文の功績を大学入試で利用することに否定的な見解を示している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国電池材料L&F、テスラとの契約額大幅引き下げ 

ワールド

ビングループのEVタクシー部門が海外上場計画、企業

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 演習2日

ビジネス

中国6社が香港上場、初値は概ね公開価格上回る 9億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中