最新記事

人身売買

英国コンテナ39人遺体 日本で働いたベトナム女性は家族のため再び異国へ渡り亡くなった

2019年10月31日(木)19時00分
チュック・グェン(フリーライター)

哀悼の意を示さぬベトナム当局

英BBCの報道によると、オックスフォード・ブルックス大学の政治社会学講師のタムシン・バーバー氏は「ベトナム人労働者にとって多くの収入が得られる英国は欧州で最も人気のある目的地だ」と述べている。同氏によるとイギリスにはベトナム人社会のネットワークがすでに存在し、新規参入者の雇用や宿泊に関する支援活動を行っており、ベトナム・レストランやネイルサロン、不法なマリファナ農場などでの労働需要があるという。

ベ トナム国内のメディアもこの事件について報道したが、BBCやCNNなど海外の報道が先行する形で、ベトナム国内では限定された情報が報道されるだけである。また、現在、開会中の国民議会(日本の国会に相当)でも、事件に関する議論はみられない。 事件の発覚した英国の人びとは犠牲者を追悼するためにろうそくを灯したが、ベトナム議会は不運な犠牲者を追悼するために1分たりとも費やすことはなかった。国民の悲しみに寄り添うことのない国民議会は、欠陥議会と言われても仕方ないだろう。

不法密入国、就労に関わるベトナム人の組織、中国人の仲介業者、そしてより規模の大きい国際的な人身売買シンジケートなどに対して徹底した捜査のメスが入らない限り、こうした悲劇が再び繰り返される可能性は高いといえるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

2回目の関税交渉「具体的に議論」、次回は5月中旬以

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米国の株高とハイテク好決

ビジネス

マイクロソフト、トランプ政権と争う法律事務所に変更

ワールド

全米でトランプ政権への抗議デモ、移民政策や富裕層優
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中