最新記事

韓国

韓国・文在寅政権、不支持率が上回ったことがわかる前日まで、GSOMIA延長が有力視されていた

2019年8月26日(月)18時30分
佐々木和義

8月の文在寅政権の支持率。先週は不支持率(赤)が上回った  YTN NEWS-YouTube

<文在寅政権の不支持が支持を上回ったことが明らかになる前日までGSOMIAの条件付き延長が有力視されていた.....>

韓国の文在寅政権は、2019年8月22日、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を延長しないと発表し、翌23日、長嶺安政駐韓日本大使に通告したが、決定直前、世論調査専門機関「リアルメーター」が、政権不支持率が支持率を上回ったと発表していた。

日本政府の韓国向け輸出規制に文大統領は徹底抗戦を表明し、支持率は上昇したが具体的な方策はなく、さらに文在寅反対派の活動も活発化している。

そして、文政権の決定に米国が強い懸念を表明する一方、中国は協定破棄を歓迎、協定破棄を求めていた北朝鮮は日本海に向けて短距離ミサイルを発射している。

韓国の政権支持率は反日姿勢で上昇してきた......

文在寅政権の支持率と不支持率は、2019年3月以後いずれも40%から50%で推移してきた。支持がかろうじて不支持を上回っていたが、7月はじめに47%で並び逆転の可能性が浮上した。日本政府が韓国に対する輸出規制を発表すると文大統領は強い姿勢で臨む方針を打ち出し、支持率は50%台に上昇した。

韓国の政権支持率は反日姿勢で一時的に上昇し、日本に歩み寄ると下降する。かつて金大中政権の支持率が低下したとき、秘書官が反日発言を提案して大統領が一蹴したという噂もある。

当初、日本の輸出規制に対して文政権はGSOMIAの破棄を視野に入れると息巻いたが、交渉カードのひとつとして述べたに過ぎなかった。日本政府が韓国をホワイト国から除外すると不買運動は過激さを増し、大統領支持率も50%台で推移した。しかし、具体的な対抗策はなく、8月15日の光復節では日本に歩み寄る発言を行っている。

8月22日にリアルメーターが発表した政権支持率は46.7%で、不支持は49.2%。翌23日の調査機間ギャラップの発表でも支持率45%に対して不支持率は49%だった。不支持が支持を上回ったことが明らかになる前日まで条件付き延長が有力視されていたのだ。なお、8月6日にリアルメーターが実施した調査で、協定破棄への賛成は47.7%、反対39.3%と、破棄が延長を上回っている。

GSOMIAを締結した際、朴槿恵大統領を解任要求

日本と韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は2010年に話が持ち上がったものだ。2012年の締結に向けて準備が進められたが、日韓関係の悪化で宙に浮いている。2015年11月、安倍首相と朴槿恵前大統領がソウルで首脳会談を行い、翌12月に慰安婦問題で日韓が合意するなど両国関係は改善の兆しを見せはじめた。

また、2016年1月と9月に北朝鮮が核実験を行い、在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に中国が反発する。安保協力の重要性が増したことを受け、16年11月23日、長嶺安政駐韓日本国全権大使と韓民求(ハン・ミング)韓国国防部長官が署名したが、国民への説明が行われることはなかった。

朴槿恵前大統領が崔順実氏に機密情報を漏らした疑惑が報じられ、退陣を求める声が広がりはじめていたのである。当時、文在寅現大統領が顧問を務めていた「共に民主党」は、協定にある韓国が入手した情報を日本に伝えるという部分を取り上げ、大統領解任要求に利用。国民は意義と内容を理解しないまま59%が反対した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中