最新記事

ブレグジット

英メイ首相、与野党幹部と「新たなEU離脱対応」協議 合意なき離脱は回避できるか?

2019年1月21日(月)10時15分

メイ英首相(写真)は欧州連合(EU)離脱合意案が下院で否決されたのを受け、与野党の幹部と協力して新たな合意案を探るアプローチを提案した。ロンドンで16日撮影(2019年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)

メイ英首相は欧州連合(EU)離脱合意案が下院で否決されたのを受け、与野党の幹部と協力して新たな合意案を探るアプローチを提案した。

新たなアプローチの内容や、それに勝算があるかどうかについて、以下にまとめた。

●メイ首相の提案内容

首相は合意案が否決された直後の発言で、全政党の幹部らとの会談を通じ、議会の支持を得られる可能性があって「真に交渉可能な」合意案を探っていくと述べた。早急に進める必要があるとしている。

首相は議会の全政党の党首に会談を求めた。21日に新たな対応について表明すると約束している。

●勝算はあるのか

首相はこれまで貫いてきた交渉の原則を、概ね維持している。離脱派と残留派はそれぞれの立場から、この原則の中の異なる部分を拒否している。

両派がともに尊重し、議会承認に十分な賛成を取り付けられるような方針変更は、1つとしてあり得ない。一方のグループに歓迎されるような変更を行えば、他方の支持票を失うだろう。

●何を協議するのか

首相は協議したい内容をいくつか明らかにしている。首相が「協議の原則」、その他の人々が「レッドライン(譲れない一線)」と呼ぶ、その内容は以下の通り。

(1)合意なき離脱

首相は合意に基づくEU離脱が好ましいとしているが、合意なき離脱の可能性も排除はしていない。

首相が合意なしでEUを離脱したいと述べれば、保守党内のEU懐疑派の支持を得られるだろうが、保守党内の親EU派および、ほぼすべての野党の支持を失いそうだ。

合意なき離脱を排除すれば、野党労働党および、保守党内の親EU派の支持を得られる可能性が出てくるが、保守党内の離脱派は反対するだろう。離脱派は、合意なき離脱をちらつかせることは、EUとの交渉における重要なカードだと主張している。

(2)離脱延期

首相は、英国法で定められた3月29日の離脱を望んでいる。

延期を試みれば、保守党内のEU懐疑派の支持を失う一方、野党の支持を勝ち取れる可能性が出てくる。もっとも、これだけでは野党の支持を得るのに十分ではないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中