(3)アイルランド国境問題巡る安全策

首相は、EU加盟国アイルランドと英領北アイルランドの国境問題を巡るバックストップ(安全策)についてEUと合意した。安全策は、国境に検問所などを復活させるのを避け、20年以上にわたって北アイルランドの平和を保ってきた和平合意を尊重するものだ。

安全策を盛り込んだことで、首相は閣外協力していた北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)および、保守党内のEU懐疑派議員の大半の支持を失った。

首相が安全策の撤廃、あるいは変更に成功すれば、DUPと保守党内の多くの批判勢力から支持を取り付けられるかもしれない。しかしアイルランドの利益を守りたいEUは、安全策なしの合意はあり得ないと訴えている。

(4)人の自由な移動

首相は、英国が国境、法律、資金を管理できるような合意案しか認めないとしている。つまりEUからの自由な人の移動と、欧州司法裁判所による司法権の行使、EUに対する加盟費の支払いを止めるということだ。

人の自由な移動を止めるという要求を取り下げれば、EUの単一市場に留まり、ノルウェーのような対EU関係を保つ「穏健な」離脱の道が開かれる。

この案は保守党内の親EU派議員が支持する可能性があり、野党議員の一部からも支持を得られるかもしれない。しかし、これは「真のブレグジット」ではないと訴えている保守党内EU懐疑派の票は失うだろう。

(5)独立した通商政策

首相は、英国は諸外国と自由に自由貿易協定を結べるようにすべきだと訴えている。これは事実上、英国がEU関税同盟に留まったり、EUとの間で新たな恒久的関税同盟を設立する可能性を排除する考え方だ。

この方針を変えれば、野党労働党の要求項目の1つを満たせる。しかし保守党EU懐疑派、その他の一部議員は、英国は自らが影響を行使できないルールに縛られることになるとして反対しており、これら議員の票は失われるだろう。

William James

[ロンドン ロイター]

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