最新記事

イラン核合意

米制裁懸念で仏海運大手がイラン撤退を発表 ロウハニ大統領は欧州に支援訴え

2018年7月9日(月)10時29分

7月7日、コンテナ海運大手の仏CMA・CGMは、取引額の大きい米国での対イラン制裁の対象となることを避けるため、イランとの取引から撤退すると発表した。写真はアルへシラス港を出港する同社のコンテナ船。5月にスペインで撮影(2018年 ロイター/Jon Nazca)

コンテナ海運大手の仏CMA・CGM[CMACG.UL]は7日、取引額の大きい米国での対イラン制裁の対象となることを避けるため、イランとの取引から撤退すると発表した。

CMA・CGMの発表は、新たな制裁をちらつかせる米国に対抗して、欧州企業にイランでの事業を継続させようと努めるイラン政府にとって打撃だ。

イランは、米国が5月に離脱を表明した2015年核合意を存続させるには、米制裁の影響を緩和するような欧州からのさらなる支援が必要だとしている。

ロウハニ大統領は7日、公式サイトに声明を掲載し、「欧州諸国は核合意に基づいてイランとの経済関係を維持する政治的な意思を持っているが、期限内に実際的な手段を講じる必要がある」との考えを示した。

英国、フランス、ドイツ、中国、ロシアとイランは6日、ウィーンで外相級会合を開き、米国抜きの核合意存続を巡り協議したが、明確な突破口は見いだせなかったもよう。

会合では、8月に再開される米国の対イラン経済制裁の影響緩和に向けた支援策がイランに提示されたが、イランは内容が不十分とした。

トランプ米大統領は5月、イランの核開発を制限するため欧米など6カ国とイランが2015年に締結した核合意から離脱し、対イラン経済制裁を再開すると発表した。

デンマークの海運複合企業APモラー・マースクは5月、米国による対イラン制裁の再開に対応するため、イランでの事業を閉鎖する方針を表明。

仏自動車大手PSAグループは6月、米国の対イラン制裁を回避するため、イランでの合弁事業を停止。仏石油大手トタルは、イランにおける数十億ドル規模のガス事業が米国の制裁対象から除外される見込みは薄いとしていた。

トタルのプヤンヌ最高経営責任者(CEO)は7日、同社に残された選択肢はほとんどないと発言。RTLラジオに対し、「イランで事業を継続すれば、トタルは米国の資本にアクセスできなくなる。われわれには会社を守る責任があるため、イランを離れるしかない」と語った。

[エクサンプロバンス(フランス)/ロンドン 7日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中