最新記事

中国

安倍首相、一帯一路協力表明--中国、高笑い

2017年6月7日(水)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

このニュアンスに関して、日本メディアの報道は、正確に言えば翻訳がそれほど忠実ではないように思う。

事実、中国のウェブサイトでは「低頭」という単語を用いて、安倍首相の協力表明を表現した情報が少なくない。

たとえば、百家号の「安倍"低頭"表態"一帯一路"」をご覧いただきたい。「低頭」はまさに「平身低頭」という日本語にもあるように、「頭を低く垂れるさま」を指す。「平身低頭して謝罪したり」、「平身低頭して懇願したり」など、いずれも「相手にひれ伏した姿勢」を指す。「表態」は「態度を表明する」という意味。

「百家号」というウェブサイトは、検索サイト「百度」(bai-du)が2016年6月に立ち上げ、9月に正式に登録されたばかりのウェブサイトで、当然、習近平政権の言論統制強化の下で公認されている。「庶民」を装いながら、「政府の喉と舌」を代弁している。

5月14日の一帯一路サミットに自民党の二階幹事長が安倍首相の親書を携え、大代表団を従えて訪中したときにも、「日本はなぜ"低頭認錯"して、一帯一路の快速列車に駆け付けたのか」というタイトルで、二階氏の訪中と習近平国家主席との対談を表現した。

「低頭認錯」とは「平身低頭して、自分の過ちを認める」という意味である。

つまり「日本は遂に、歴史問題に関して降参し、中国に頭を下げてきた」ということを意味する。

その証拠をお見せしよう。

中国ネットユーザーの声から

「中華民族の偉大なる復興」を政権スローガンに掲げる習近平政権のもくろみ通り、中国のネットは、やがて世界一になるであろう中国への自負心に満ち満ちている。

その手段は、アメリカを凋落させてから、対米追随の日本を落すことである。

トランプ政権になってから、アメリカはまさにオウンゴール(サッカーなどにおいて、自分の能動的な行動によって自陣のゴールに誤って失点しまうこと)によって、中国に点数を稼がせてくれている。そうでなくとも、親中派のキッシンジャー元国務長官を用いて、トランプ大統領の娘婿クシュナー氏を洗脳し親中へと傾かせてきたが、もうそのスケールではないほどに、トランプが自ら失点してくれているのだ。

だから中国政府の雇われネットユーザーである「五毛党」の書き込みは、堰を切ったように「日本への侮蔑」と「侮蔑することへの快感」そして「日本を遂に打ち負かすことになる中国への誇り」に満ち満ちている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ソマリランドを初の独立国家として正式承

ワールド

ベネズエラ、大統領選の抗議活動後に拘束の99人釈放

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡り国民投票実施の用意 ロシ

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中