最新記事

金融

アルゼンチンが2002年のデフォルト以来の国際市場復帰、一方で法廷闘争は終わらず

2016年4月15日(金)10時37分

 さらに先週には、新興国市場投資家として有名なグレイロック・キャピタル・マネジメントが、アルゼンチンはすべての投資家を公平に扱っていないとの理由で、訴訟を起こした。

 アルゼンチンがホールドアウト債権者と合意した46億5000万ドルを支払うという和解条件は、他の一般債権者向けよりもホールドアウト債権者を優遇するものだからだ。

 またアルゼンチンとホールドアウト債権者の合意を受け、マンハッタン連邦地裁のトーマス・グリーサ判事は3月2日、アルゼンチンの債務支払いの一時停止命令を解除する判決を下した。

 3月25日には、この命令解除の撤回を求める訴訟をある投資家グループが提起している。グリーサ判事は今月12日に訴訟を棄却した。

 グレイロックの訴訟はまだ続いている。

 ノムラの中南米債券戦略責任者、シオバーン・モーデン氏は「(なお解決していない)訴訟の割合は小さいが、アルゼンチンがそうした債務の存在を否定すれば、新発債を買ってくれる投資家を最大限にしなければならない今の局面で、一部の重要な投資家に不必要な不信感を生じさせる」と指摘した。

 一方、ヒューストンのある個人投資家はは、デフォルト前に額面で購入したアルゼンチン債について、ホールドアウト債権者と同条件の支払いをするべきだと主張しているものの、アルゼンチン政府と交渉する「つて」がまったくないため、怒りの矛先をポラック氏に向けて訴訟を起こした。和解交渉の蚊帳の外に置かれたのは許せないということだ。

 この個人投資家は、1979年のイラン革命で財産を失って米国に逃げてきた現在93歳の父親を含めた家族のためにアルゼンチン債に投資していたと説明している。

 アルゼンチンはなお係争中の問題があることは承知しており、今回の起債目論見書には「アルゼンチンに対するさらなる訴訟が、国際金融資本市場のアクセス能力もしくは当該債券と既発債の支払いに悪影響を及ぼさないとは保証できない」と記されている。

 (Daniel Bases、Dion Rabouin記者)

 

[ニューヨーク 13日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ

ワールド

米国防長官、「中国の脅威」警告 アジア同盟国に国防

ビジネス

中国5月製造業PMIは49.5、2カ月連続50割れ

ビジネス

アングル:中国のロボタクシー企業、こぞって中東に進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 6
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 9
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 10
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中