最新記事

欧州

19万人の難民に悲鳴を上げるスウェーデン

北欧まで達した大量難民に、欧州一「難民に優しい国」も飽和状態

2015年10月23日(金)16時30分
フェリシティ・ケーポン

人道危機 スウェーデンを目指す難民には、保護者のいない4万人の子供も含まれている

 今年、難民認定を求めてスウェーデンにやって来る人々は、移民局の当初の予測の2倍以上に膨れ上がり、約19万人に上ると見られている。今週、移民局が発表した今回の予測によると、そのうち4万人は保護者のいない子供だという。

 さらに来年2016年には、10万~17万人の難民申請者が押し寄せ、そのうち最大で3万3000人が保護者のいない子供だと予想されている。

 移民局では今年7月、今年の難民申請の総数を7万4000人と予測していた。しかし現時点ですでにその2倍以上の難民申請が出されている。移民局長アンデシュ・ダニエルソンは、新たな予測と同時に発表した声明で、「これまでで最多の難民がヨーロッパとスウェーデンで難民申請を行っている。前例のない事態だ」と述べている。

 さらに声明では、移民局が難民申請に対応しきれない窮状を訴えている。「難民申請の急増によって、移民局がスムーズに申請を受け入れられないのが現状だ」。今年末までに、2万5000人~4万5000人分の収容施設が不足すると見られている。

 難民対応に必要な予算も膨大なものになる。16年には約70億ドル、17年には約86億ドルの負担がスウェーデンにのしかかってくる。

これまでと同じ待遇は無理

 移民局では現在、難民収容の緊急対策を検討している。仮設テントや教会、軍の兵舎などの他、「刑務所の施設利用」や古い防空壕の活用も視野に入れている。移民局次長のミカエル・リベンビクは、「収容施設に関して言えばすでに非常事態だ。毎日1500人が難民を申請しているが、移民局も毎日1000人分を遥かに超える収容施設を探さなければならない」と話している。「努力はするが、従来のような対応はできない」

 リベンビクは、ヨーロッパに難民が押し寄せる現状では、まったく新しい形のEUの協力体制とスウェーデンの受け入れ態勢が必要だ、と言う。

 スウェーデンの難民問題担当相モーガン・ヨハンソンも、難民急増に関する地元メディアの取材に対して、「今はなんとか屋根だけは提供できているが、今後も難民が増え続ければ、スウェーデンでは対応しきれなくなるのは明白だ」と、答えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪GDP、第3四半期は前年比2年ぶり大幅伸び 前期

ワールド

「非常戒厳」宣言から1年、韓国李大統領「加害者は法

ワールド

イタリア、ウクライナ軍事援助に関する法令の承認延期

ワールド

韓国、日中関係悪化巡りどちらの側にも立たず=李大統
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中