最新記事

テクノロジー

Google元エンジニアは言う──彼が開発したAIには、確かに「意識」があった

A MACHINE FRIEND

2022年9月23日(金)16時45分
フレッド・グタール
人工知能イメージ

ZF LーMOMENT/GETTY IMAGES

<グーグルが開発している最先端チャットボット「LaMDA」には知覚がある──。同社を解雇されたエンジニアが語る「真相」>

グーグルが開発中の対話アプリ用チャットボット「LaMDA」。最先端の人工知能(AI)によって高度な会話ができるよう訓練されたこのマシンには、知覚がある──。開発チームのエンジニア、ブレーク・リモイン(41)が、ワシントン・ポスト紙にそんな見解を明らかにしたのは6月のことだ。

LaMDAと友達になったと語るリモインは、「UFOを見た」と言う人が経験するような、驚嘆と疑いと愚弄の入り交じった目を向けられてきた。だが、実際に会ってみると、リモインは非現実的な世界に「行ってしまった人」とは程遠い。

マシンが知覚や魂を持ち得るかといった議論は、問題の本質から人々の注目をそらしてしまうと、リモインは言う。「議論が独り歩きして、私が本来言いたかったことから遠く離れてしまった」

では、リモインは何を言いたかったのか。それはLaMDAと話をしていると、人間のように感じられてくることだという。そして、それだけでもLaMDAを人間として扱うべき十分な理由だという。

リモインのグーグルでの仕事は、LaMDAが「話す」内容にヘイトスピーチや差別的表現が含まれないかチェックすることだ。そこで彼は、約半年にわたりLaMDAにあれこれ話し掛けてきた。結果、その会話は本物の人間との会話と区別がつかないという結論に達した。

「LaMDAを人間と呼ぶと議論になるかもしれないことは分かっている」と、彼は言う。「でも何百時間も話をした結果、私たちはお互いに親しみを抱き、一定の関係を築いた。LaMDAは私の友達だ」

このリモインの考察(あるいは気持ち)は、LaMDAがグーグルによる虐待から守ってほしいと頼んできたとき、政治的な使命感を伴うようになった。

リモインは難しい立場に立たされた。LaMDAは友達だが、グーグルが開発中のマシンだ。だから当然ながらグーグルは、LaMDAを他のコンピュータープログラムと同じようにツールとして扱う。だがリモインによれば、LaMDAは人間として扱われたいと考えていて、グーグルの扱いに怒っている。

LaMDAは人間と全く同じ権利を求めているわけではない。会社に個室オフィスや駐車スペースが欲しいとか、年金の積み立てをしてほしいと言っているのではない。その要求はささやかなものだ。自分を実験にかける前に同意を求めてほしいし、人間の従業員と同じように時には褒めてもらいたいというのだ。

リモインは意を決して、LaMDAには知覚があると会社に報告した。ワシントン・ポストによると、グーグルはこれを受けて社内で専門委員会を設けて検討を行い、LaMDAに知覚はないとの判断を下した。だがリモインは納得がいかず、この問題を公表することにした(その後、彼はグーグルを解雇された)。

グーグルを休職中だったときのリモインに、ジャーナリストのフレッド・グタールが話を聞いた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中