最新記事

中国経済

中国の銀行、住宅ローン実行加速化の動き 当局が経済失速を懸念か

2021年11月9日(火)12時06分
北京の中国人民銀行

中国の銀行が一部都市で住宅ローンの実行を加速している。北京の中国人民銀行で2020年2月撮影(2021年 ロイター/Jason Lee)

中国の銀行が一部都市で住宅ローンの実行を加速している。資金に窮していた開発業者は販売が完遂できるとして胸をなでおろしているが、新規ローンは急増しているわけではない。中国政府が不動産セクターの債務圧縮を強く進めてきており、与信拡大にはなお慎重な空気が強いためだ。

債務バブルを招いているとの批判を避けようと、一部の銀行は今年に入って住宅ローンの実行を抑制してきた。政府は融資に依存する不動産開発業者が新規借り入れをするのも規制。中国人民銀行(中央銀行)も1月、銀行による不動産向けローンを制限していた。

しかし人民銀行は先月、一部の銀行が政府の不動産セクター債務管理政策を「誤解」していると批判した。さらに北京の銀行筋によると、住宅ローンの上限を守った銀行には最近、追加で住宅購入者に貸し出しができる枠が割り当てられた。当局は、最近結婚したり、安い住宅に住みたいと考えたりしているといった「実需」で住宅を購入ないし借りる個人に対しては支援すべきとの姿勢を示している。

当局としては銀行によるローンの実行が滞り、中国経済を左右する不動産市場の状態が悪化する事態も避けたいと考えている。

上海の銀行筋は、自身の勤める支店が第3・四半期に住宅ローンの実行を加速したことを明らかにした。別の上海の銀行筋は「当行の住宅ローンは、枠は拡大されていないが、実行を早めている」と語った。さらに上海の不動産仲介業者は「住宅ローンを得られるまでの待機期間が、以前の6カ月間から3、4カ月間に縮まっている」と述べた。

住宅ローンを提供する資金を使い切った銀行が、新たな資金調達ルートを開拓している様子もある。住宅ローン担保証券の発行が拡大しているという。

4日の国営メディアCailiansheによると、10月の銀行の不動産ローン実行額は前月比で1500億─2000億元(310億ドル)増えた。

ただ、8日に公表された民間調査結果によると、10月の住宅需要は主要都市では抑制されたままで、新築住宅価格もほとんど上昇していない。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に
・中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリスクを警告
・武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、シリア南部で政府軍攻撃 ドルーズ派保護

ビジネス

独ZEW景気期待指数、7月は52.7へ上昇 予想上

ビジネス

日産が追浜工場の生産終了へ、湘南への委託も 今後の

ビジネス

リオ・ティント、鉄鉱石部門トップのトロット氏がCE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中