最新記事

FRB

イエレンFRB議長、年内利上げの課題は発信力

リーダーシップを発揮しなければ金利高騰などで米国の景気回復が損なわれる恐れも

2015年10月29日(木)14時09分

10月28日、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長(写真)は、連邦公開市場委員会(FOMC)の声明で12月の利上げを政策課題として見事復活させた。9月撮影(2015年 ロイター/Jonathan Ernst)

 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、28日までの連邦公開市場委員会(FOMC)の声明で12月の利上げを政策課題として見事復活させた。次に必要となるのは、自身から市場へのメッセージ発信を強化することだ。

 それによって内部の反対意見を「一掃」し、さえない経済指標が出てきてもうまく乗り切っていける。

 今回のFOMC声明文には、12月15─16日の次回FOMCで利上げの可否を判断すると明記されたため、市場では利上げが来年に先送りされるとの見方がやや後退。フェデラルファンド(FF)金利先物が見込む12月の利上げ確率は34%から47%に上がった。

 イエレン氏はずっと前から、年内に事実上のゼロ金利を解除することが基本シナリオだと表明していたのだが、FRBの他の何人かの当局者からの異論や、利上げは「データ次第」という姿勢を示してきたために、肝心のメッセージが影をひそめてしまった。

 そこでアナリストや元FRB幹部らは、イエレン氏が恐らくは12月初めまでには、年内に利上げをするか、先送りを確定するかをはっきりさせるために「議長としての影響力」を行使するはずだとみている。

 同氏が何もしなければ混乱を招き、市場では金利高騰など極端な動きが生じて米国の景気回復が損なわれる恐れがある。

 オイラー・ハームズのチーフエコノミスト、ダン・ノース氏は「イエレン氏は内部で反対者を説得し、できるだけ全員一致の決定にする必要がある。そうでないとまた混乱と透明性の欠如にさらされる」と指摘した。

 イエレン氏はこれから11月いっぱいまで、物価や雇用に関するデータを点検する時間があるだろう。手始めは29日公表の第3・四半期国内総生産(GDP)速報値だ。

 ただ、FRBのタルーロ、ブレイナード両理事やシカゴ地区連銀のエバンス総裁は最近、利上げ先送りを支持している。投資家の間でも年内利上げに疑問が高まっているため、イエレン氏としてはFRB内で合意形成を模索するのをやめて、より強引な形で政策方針を定めていかなければならないかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米、ロ産石油輸入巡り対中関税課さず 欧州の行

ワールド

米中、TikTok巡り枠組み合意 首脳が19日の電

ワールド

イスラエルのガザ市攻撃「居住できなくする目的」、国

ワールド

米英、100億ドル超の経済協定発表へ トランプ氏訪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中