コラム

世界的な写真家が「魔法的な構図の創作者」を超えた写真

2019年10月27日(日)10時40分

そして、かつては「Subject Matter ――具体的な被写体やトピック、イシュー中心主義」つまり、俗に言うフォトジャーナリズム的だったが、今では写真とは自分のパーソナルな人生を映し出すものと考えている、と彼は話す。目の前にある風景、空間に、自分の中の何かが超自然的に共感したものだけを撮るようにしていきたいのだという。

実のところ、このパーソナル性こそがジェイコブソンの最大の魅力だ。立ち位置による魔法的な構図の創作者というだけでは、彼は数あるトップクラスの写真家の1人に終わっていただろう(それでもすごいことだが)。彼の最高傑作とも言われる比較的近年のシリーズ「The Last Rolls」のように、写真そのものを超えるような写真には、行き着かなかったかもしれない。

「The Last Rolls」は、彼が癌を宣告されて死を感じた2005年と、長年彼の作品の手段そのものだったコダクローム(フィルム)が生産を中止した2011年の間に作られたシリーズだ。その作品は、暗いかもしれない。だが同時に、安らぎと、なぜか解放の匂いさえしている(1枚目の写真)。

ジェイコブソンは言う。癌は私の写真にとって贈り物になった、癌と死に向き合ったことが自身の解放になっている、もう何も恐れることはない、時間が最も重要になった......。

幸いにも現在、試験薬が功を奏し、ジェイコブソンの癌は治癒した。彼は今も写真を撮り続けている。

今回紹介したInstagramフォトグラファー:
Jeff Jacobson @jeffjacobsonpix

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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