コラム

トランプボイコットで、共和党予備選のテレビ討論は初回から大混戦

2023年08月24日(木)16時00分

トランプは「バカバカしい」という理由で討論会をボイコット Jonathan Ernst-REUTERS

<トランプ不在の討論会で大きくポイントを稼いだ候補はおらず、米政治の世代交代への期待の高まりが予想される>

アメリカ東部時間の23日夜9時から、2024年の大統領選予備選を目指す共和党候補たちによる、第1回のテレビ討論が行われました。場所はウィスコンシン州ミルウォーキーで、開催局はFOXニュースです。このテレビ討論ですが、昨年秋に真っ先に立候補宣言をしたドナルド・トランプは参加していません。

トランプは現時点では、現在世論調査の全国平均では55%と過半数を超え、2位のデサンティス・フロリダ州知事に40ポイントの大差をつけています。数字としては、圧倒的な1位なのですが、そのトランプは「支持率を見れば時間の半分もらってもいい自分としては、全員が同じ持ち時間のテレビ討論などバカバカしくて出ない」としています。

そのトランプは、討論の2日前に保守派のキャスターであるタッカー・カールソンによるインタビューを録画しており、わざわざFOXニュースがテレビ討論を生中継する時間にアップするという「嫌がらせ」を行いました。

2時間にわたって行われた討論ですが、全体的には低調でした。本稿は直後の時点ですので、簡単にまとめると、特筆すべきは次の4点に絞られると思います。

精細を欠いたデサンティス

1)参加者8名の中ではトップにつけているロン・デサンティス候補は、精彩を欠いていました。2020年の選挙結果についてバイデンの勝利を認証したペンス氏の判断を支持するかという点では、「民主党を利するだけ」だとして明確な返答を避けていましたし、ウクライナ支持もハッキリ打ち出しませんでした。つまり、今でもトランプ支持者を取り込まないと勝てないという呪縛に囚われているようでした。発言も、必死に暗記したものを必死に格好良く喋るようにしており、説得力にはやや欠ける印象でした。

2)今夜の主役というべきパフォーマンスを展開したのは、支持率2位のインド系起業家ラムズワミ候補でした。ウクライナへの支援カット、南部国境の閉鎖など、トランプ的なポピュリズムを「つまみ食い」しながら、38歳という若い世代として、核家族の重視を主張しつつ、徹底した小さな政府論「リバタリアン」的な過激な発言を繰り返したのです。しかも縦横無尽に他人の発言に割って入り、とにかく芸人さながらのアドリブ発言が全て切れ味よく決まっていました。本当の信念は透けて見えませんでしたが、当面は若年層を中心に浸透しながら選挙戦の台風の目になりそうです。

3)人気が上がりつつあったティム・スコット候補(上院議員、唯一のアフリカ系)は、最初は調子が出ませんでしたが、後半は手堅くまとめて好感を得たのではないかと思います。

4)ペンス、ヘイリー、クリスティの「元トランプ陣営」だが「今はトランプとは一線を画する」ことを宣言した3人組は、それぞれにぶれずにクラシックな共和党路線を主張していました。ですが、画期的なポイントを稼ぐには至りませんでした。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

〔情報BOX〕米・イスラエルがイラン攻撃、国際社会

ワールド

OPECプラス、増産規模の拡大検討へ イラン攻撃受

ワールド

米軍最高司令官と国防長官、トランプ氏私邸からイラン

ワールド

米・イスラエルがイラン攻撃、最高指導者ハメネイ師ら
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「内側」から食い尽くす...カナダの大学が発表
  • 4
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 5
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    トランプがイランを攻撃する日
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキン…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 8
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story