コラム

キリスト教を弾圧する「現代のローマ帝国」共産党を待つ未来

2015年08月10日(月)15時30分

 今回の漫画は、中国浙江省で1年余り続く大規模な十字架の破壊活動についてのものだ。

 現在の浙江省トップである党委員会書記の夏宝龍(シア・パオロン)は習近平(シー・チンピン)の政治的盟友で、多くの政治アナリストが浙江省でのこの破壊活動と習が関係あると見ている。同省温州市のシンボル的建築物である有名な三江教会は4月28日、「違法建築」を理由に夏の命令で強制撤去されたが、それ以前から浙江省のほかの地域で教会の十字架を破壊する活動は続いていた。三江教会が壊された後、大規模な十字架破壊活動は本格化。キリスト教徒たちは一貫して抵抗したが、多くの信者が十字架を守ろうとして警察に打ちのめされた。

 統計によれば、浙江省全省で1500の教会の十字架が破壊され、中には火を付けて焼き払われたものもあったという。しかし浙江省の数百万人の信徒は屈服せず、十字架を大量に自作した。壊したければ壊せばいい、無法な戦いを続けるなら、我々は車の中に、家の玄関に十字架を掲げる--彼らはこう語っている。

 共産党政府はなぜキリスト教を迫害するのか。西側諸国の近現代社会における三権分立や人権など「普遍的価値観」と関係する思想や道徳観は、多くがキリスト教文化の影響を受けているが、中国のキリスト教も例外ではない。世俗の権力に屈しないキリスト教徒は共産党の統治にとって大きな「危険要素」であり、「目の中のクギ」になっている。法輪功を除けば、キリスト教は80年代の改革開放が始まった後の中国で最も厳しい弾圧を受けた宗教の1つだ。

 一方で、共産党政府は一貫して「共産主義信仰」を捨ててこなかった。中国では共産党員は必ず無神論者でなくてはならず、共産党は無神論者にとっての宗教と化している。共産党自身は国家権力を独占しているため、ある意味中国はただの強権国家でなく、政教一致国家になっている。

 キリストを十字架で処刑した後、ローマ帝国はコンスタンティヌス1世が公認・帰依するまで、長期にわたってキリスト教徒を迫害し、殺し続けた。そして中国では49年以降、教科書でも共産党系メディアでもキリスト教は「精神のアヘン」と呼ばれ続け、清朝末期の伝道師たちは帝国主義の手先とされている。悪意に満ちた宣伝活動以外にも、共産党は現在の狂ったような十字架破壊にいたるまで、一貫して実際の行動の上でもキリスト教を弾圧し続けている。

 2000年前のローマ帝国はキリスト教に勝つことはできなかった。習大帝にもおそらくそれは無理だろう--私はそう思う。

<次ページに中国語原文>

プロフィール

辣椒(ラージャオ、王立銘)

風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

南アフリカ、8月CPIは前年比+3.3% 予想外に

ビジネス

インドネシア中銀、予想外の利下げ 成長押し上げ狙い

ビジネス

アングル:エフィッシモ、ソフト99のMBOに対抗、

ビジネス

再送-日経平均は5日ぶり反落、米FOMC前の調整で
今、あなたにオススメ
>
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story