コラム

法人減税が「内部留保」にしかならなかった日本、税制改正には大いに期待できる

2022年06月01日(水)17時17分
日本のビジネス街

MARTIN-DM/ISTOCK

<法人税の引き上げ案が浮上しているが、単なる引き上げではなく現在の歪な「優遇措置」を是正することでより大きな効果が見込まれる>

与党の税制調査会で法人税を引き上げる案が浮上している。これまで政府は法人減税を繰り返しており、日本の税率はかなり低くなった。

一方、最近では、法人税の最低税率設定について各国が合意したり、米バイデン政権が財政基盤の強化を目的に税率引き上げを検討するなど、国際的にも法人税を見直す動きが顕著となっている。コロナ対応や防衛費増額問題など財源不足が深刻化するなか、日本でも減税の流れが逆転する可能性が出てきた。

かつて日本の法人税の実効税率は40%を超えていたが、段階的に減税が行われてきた。特に安倍政権は財界からの要請を受けて3回も法人減税を実施しており、現在の税率は23.2%まで下がっている。

大企業にその傾向が顕著だが、法人減税が実施されたにもかかわらず、それによって得られたキャッシュを設備投資に回さず、多くを内部留保としてため込んでいる。与党内の本格的な議論はこれからだが、設備投資に対する減税措置を組み合わせることで、投資を促進するプランが検討されており、23年度税制改正をメドに調整を進めていくという。

消費税や相続税が増税されるなか、法人税が優遇されてきたという経緯や、企業が減税による利益を十分に活用していない現状を考えると、法人税の扱いを議論の対象としたこと自体は評価できる。

大企業の既得権益と化した特別措置

しかしながら、単純に税率をかつての水準に引き戻すというやり方は望ましいものではない。単純な税率の引き上げは景気に逆風になるのはもちろんのこと、日本の法人税には数多くの優遇税制が張り巡らされており、これが問題を複雑にしているからである。

前述のように日本の法人税の水準はかなり高かったが、全ての企業が名目上の税率を負担していたわけではない。法人税には特定企業の税金を優遇する租税特別措置(租特)と呼ばれる仕組みが存在しており、実際の税率はかなり低かった。

租特には中小企業の税制優遇や研究開発促進税制など重要な項目も含まれているが、優遇を受けている企業の多くは資本金100億円以上の大企業であり、既得権益化して見直しが行われていないケースも多い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦時下でも「物流を止めるな」 ウクライナ

ワールド

メキシコ南部でM6.5の地震、首都でも揺れ 大統領

ワールド

再送ウクライナ北東部ハルキウの集合住宅に攻撃、2人

ビジネス

米国株式市場=5営業ぶり反発、ダウ319ドル高 半
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 4
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 5
    【現地発レポート】米株市場は「個人投資家の黄金時…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story