コラム

日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶

2022年04月01日(金)17時30分

同じく製造業が強いスウェーデンに至っては個人消費の比率はわずか44.7%しかない。これらの国々はまさに輸出主導型経済と言ってよく、日本はどちららかというと輸出主導型経済と消費主導型経済の中間地点と見なせるだろう。

加えて言うと、同じ輸出主導型経済であっても、典型的な福祉国家のスウェーデンと、日本と同じく自助努力が強く求められ社会的弱者の保護に消極的な韓国とでは、政府支出の比率が大きく異なる。スウェーデンは、韓国よりも製造業の付加価値が高く、余力を社会保障に充当しているという図式であり、これが政府支出という形で経済に貢献している。

韓国はかつては外貨の獲得に苦しみ、海外への利払いや返済が企業経営の重荷となってきたが、リーマン・ショック以降、輸出が大幅に増え、国際収支は近年、劇的に改善している。企業資金需要の多くを国内貯蓄で賄えるようになり、豊かだった日本に近い状態となりつつある。

日本以外の先進諸外国は、日本がゼロ成長だった過去30年、順調に成長を続けることができたが、それは各国企業がそれぞれの経済構造に合致した形で、業績拡大の努力を続けたからである。

グローバル基準でも大手だった日本企業の現状

消費主導型経済であるアメリカの場合、経済をリードする企業はウォルマートやホーム・デポといった小売店、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に代表される生活用品メーカーなどであり、一方、輸出主導型経済において成長のエンジンとなっているのは電機や機械、化学など典型的な製造業だ。

ドイツにはシーメンスやバイエルなど、グローバルに通用する巨大メーカーがたくさんあり、スウェーデンは小国でありながら、エリクソン、ボルボ、イケア、H&M、スポティファイといった著名企業がそろっている。韓国はサムスンとLGが有名である。

日本の大手企業は80年代まではグローバル基準でも大手だったが、30年間で様子は様変わりした。各国企業が軒並み売上高を拡大する中、日本企業だけが業績の横ばいが続き、多くが相対的に中堅企業に転落した。グローバル基準でも大手といえるのは、もはやトヨタや日立、ソフトバンクグループなどごくわずかである。

日本企業の凋落は全世界の輸出シェアを見れば一目瞭然だ。日本は80年代までは順調に世界シェアを拡大し、一時はドイツと拮抗していた。ところが90年代以降、日本企業はみるみるシェアを落とし、今では4%を割るまでになっている。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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