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iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは? メリット・デメリット、運用商品を解説

2024年02月01日(木)10時03分
iDeCoとは?

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは?

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)は、公的年金とは別に上乗せする形で受け取れる私的年金の制度。基本的に20歳以上65歳未満のすべての国民が加入対象である。

iDeCoに加入すると、月々5,000円以上の掛金を積み立て、投資信託をはじめとする運用商品で自ら運用する。60歳以降に老齢給付金を受け取るまで、長期を前提に掛金を積み立て運用できる老後に向けた資産形成を支援する制度だ。

加入方法は、証券会社・保険会社など金融機関(運営管理機関)に加入の申し出を行う。約160の金融機関がiDeCoを取り扱っているため、加入希望者はその中から1社を選ぶ。金融機関によって取り扱う運用商品が異なることから、金融機関は慎重に選ぶことを推奨する。

iDeCoには毎月いくらまで積み立てられる?

iDeCoに積み立てられる限度額は、加入者の加入資格によって異なる。以下の表にそれぞれの限度額をまとめた。

国民年金の加入資格 限度額(月額) 第1号被保険者(自営業・フリーランス) 6.8万円 第2号被保険者(会社員・公務員) 企業年金に加入していない 2.3万円 企業型DCのみに加入している 2.0万円 企業型DC、DBに加入している 1.2万円 DBのみに加入している 1.2万円 公務員 1.2万円 第3号被保険者(専業主婦・主夫) 2.3万円

企業型DCは企業型確定拠出年金、DBは確定給付企業年金をはじめとする厚生年金基金などを指す。会社員の場合は企業年金の加入状況に応じて限度額が異なるため、掛金を決めるために加入状況の把握が必要。

iDeCoのメリット

 

利息や利益が非課税になる

iDeCoに加入し掛金を運用する際は、iDeCo専用の口座を開設し、運用商品を運用する。口座内で発生した運用商品の利息や利益には税金がかからず、非課税となる。

投資信託であれば、通常、利益には20%の源泉分離課税が課され、2013年以降から復興所得税がかかることから、合計で20.315%の税金が差し引かれる計算だ。iDeCoで運用すれば、利益に対して税金が徴収されることはない。

 

掛金が所得控除の対象になる

iDeCoの掛金は毎月5,000円以上かつ加入資格に沿った限度額の範囲内で自由に決められるが、支払った掛金の全額が所得控除の対象になる。所得控除を受ければ、当年分に支払い予定の所得税、翌年度に支払う住民税が減額される。所得控除の適用には確定申告、または年末調整が必要だ。

 

受取時にも税制的に優遇される

iDeCoは老齢給付金として受給する。受取方法は2種類あるが、一時金として一括で受け取る場合は退職所得控除、年金として分割で受け取る場合は公的年金等控除の対象になる。どちらの方法で受け取っても税制的に優遇されるため、iDeCoは節税メリットの大きい制度である。

iDeCoのデメリット

 

60歳以降でなければ受給できない

iDeCoは中途解約を認めておらず、原則として60歳になるまで受給できない。一度加入すればやめられず、掛金を引き出せないため、加入は慎重に検討したい。また60歳になった時、通算加入者等期間が10年に満たない場合も受給できない。

 

口座管理料・手数料が必要

iDeCoに加入するために特定の金融機関を選んで口座を開設するためには手数料がかかる場合がある。手数料の種類は、iDeCoへの加入・他の金融機関から口座を移管する場合にかかる加入・移換手数料、口座の管理にかかる毎月の事務手数料が口座管理料である。

そのほかにも、給付・還付にも手数料がかかり、金融機関によって内容も異なるため、運用商品だけでなく手数料で比較して口座の開設先を選ぶことも重要。

 

元本割れのリスクがある

iDeCoは投資信託など、損失が発生する可能性がある運用商品を運用先の対象にしていることから、運用方法によっては元本割れのリスクがある。投資信託などリスクがある運用商品を運用先として選択する場合は、基礎的な投資の知識と運用商品の理解が必要。

iDeCoの運用商品

 

定期預金

iDeCoの掛金は定期預金で運用できる。定期預金で運用する場合は、利益はほとんど期待できないが、所得控除などの節税メリットを享受しながら、元本割れのリスクなく安全に制度を利用できる。

ただし、iDeCoには口座管理料などの手数料がかかり、定期預金の利息と口座管理料を比較した場合、手数料が利息を上回る可能性もあるため注意が必要だ。

 

株式型投資信託

iDeCoの口座で主に運用できる運用商品は投資信託である。投資信託は運用を専門家に任せられることから、投資初心者も投資しやすい。しかし、投資信託には種類があり、種類ごとに期待できるリターンや取ることになるリスクが異なる。iDeCoの運用成果は選ぶ投資信託に影響されるため、種類ごとの特徴を理解する必要がある。

株式型投資信託は、株式を投資対象にした投資信託であり、高いリターンが期待できるが、リスクも高い。金融市場の動向に左右されやすく、短期的に大きな損益が生じやすい。リスクが取れる20代や30代など若い年代からiDeCoに加入し、60歳まで積み立てて投資する場合に向いている運用商品である。

 

債券型投資信託

債券型投資信託は、債券を投資対象にした投資信託であり、リスクは低いが、期待できるリターンも低い。値動きの幅が狭く、短期的に大きな損益が生じにくい。40代~50代で年金を確保するために高いリスクを取りたくない場合は、リスクを抑えられる債券型投資信託を選ぶ選択肢もある。

 

REIT(不動産型投資信託)

REITは不動産を対象にした投資信託であり、金融機関によってはiDeCoに対応したREITを取り扱っている場合がある。株式・債券とは値動きが異なる不動産を対象としているため、合わせて投資することでリスクを分散させられる。

 

コモディティ型投資信託

コモディティとは、金やプラチナなどの貴金属、トウモロコシや大豆などの穀物、原油やガソリンなどのエネルギーなど、価値のある商品のことを指す。インフレによって物価が上がった場合などにリターンが大きくなるため、コモディティを投資対象にする投資信託はインフレ対策になる。

 

バランス型投資信託

バランス型投資信託は、株式・債券・不動産・コモディティのように投資対象を限定せず、専門家が考える適切な配分によってバランスよく投資する商品。投資信託でリスク分散を考えるなら、バランス型投資信託は適している。

ただし、他の種類の投資信託と比較して手数料である信託報酬が高い場合もあり、バランス型投資信託に投資するより、自身でバランスを考えて複数の種類の投資信託に投資するほうが運用成果は高まることも考えられる。

 

ターゲットイヤー型投資信託

ターゲットイヤー型投資信託は、60歳の受給開始年齢など目的となる年を定めて、その年度に合わせて資産配分を変えて運用する投資信託である。

例えば、30代の人がターゲットイヤー型投資信託を購入したとき、若い時代はリスクが取れることから、株式の配分の大きい状態で投資する投資信託となる。40代になれば、リスクを抑えるために債券の割合を増やし、50代で債券を中心としたリスクの低い資産配分に切り替える仕組みだ。

バランス型投資信託と同様に他の投資信託と比較して手数料が高くなりやすい。手間をかけずにバランスを含めて専門家に任せる形で運用するか、多少手間をかけても自身でバランスを考えて手数料の低い投資信託に投資するかを選択する必要がある。


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