コラム

「騙されるAI」0.001%の誤情報の混入で誤った回答を導く巨大な罠

2025年05月05日(月)10時46分

Xのコミュニティノートも汚染されており、2023年後半から2025年前半までの間にPravdaネットワークを情報源とするコミュニティノートが153件作られていた。それら以外にも検索結果に表示されることや、うっかり記事やまとめサイト、個人のブログなどでとりあげられることもある。

PravdaネットワークあるいはPravdaネットワークに汚染された検索結果、Wikipedia、記事などから学習したAIがロシアに都合のよいプロパガンダを回答するようになってしまっているのだ。


Pravdaネットワークは圧倒的なコンテンツの量と相互リンクを持ち、高い頻度で更新しているが、人間に対する効果はそれほど出ていない可能性が指摘されている。そのため、狙いはAIを騙すことにあるのではないかと推測されている。

PravdaネットワークによるLLMグルーミング

AIのハルシネーションに相乗りするスロップスクワッティング

システム開発でAIが存在しないパッケージを利用する問題を前に書いたが、それを逆手に取った攻撃が増加している。

スロップスクワッティングと呼ばれる手法で、あらかじめAIがハルシネーションで言いそうなパッケージ名を予想し、そのパッケージ(マルウェアつき)を登録しておくのだ。

ハルシネーションしそうなパッケージをAIに大量に作らせる方法も出回っている。パッケージだけではなく、ブログなども作っておくことで信憑性が増す。そこまでやるとグーグル検索で表示される「AIによる概要」がこの偽のパッケージを紹介することも起こる。

AIのハルシネーションに相乗りし、さらにそれがグーグル検索のAIをLLMグルーミングするという入り組んだ偽・誤情報のエコシステムができている。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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