ニュース速報
ビジネス

米独国債利回り差が7月以来最大、弱い欧州経済 米と明暗

2024年10月15日(火)16時52分

 10月15日、欧州と米国の国債利回り差が拡大している。写真はEUの旗。7月、独フランクフルトのECB本部で撮影(2024年 ロイター/Jana Rodenbusch)

Harry Robertson

[ロンドン 15日 ロイター] - 欧州と米国の国債利回り差が拡大している。経済情勢、金融政策の見通しの違いが背景にあり、この状況は当面続くと予想されている。

米独の10年債利回り格差は7月以来最大となる約183ベーシスポイント(bp)に拡大した。ゴールドマン・サックスは200bpまで拡大する可能性を指摘。ブラックロックの欧州ファンダメンタル債券部門共同責任者サイモン・ブランデル氏は「こうした市場力学はまだ続く」とみる。

9月の米雇用の伸びは予想を大幅に上回り、米国経済の力強さが浮き彫りになった。一方、ユーロ圏の企業活動は9月に予想外に縮小した。

トレーダーは、米連邦準備理事会(FRB)の次の利下げ幅は9月の0.50%から縮小すると予想する。欧州中央銀行(ECB)については、9月に続く2カ月連続の利下げの可能性を織り込んでいる。

金利見通しの違いから、ユーロ/ドルは約2カ月ぶりの安値に下落している。

ドイツ政府は先週、2024年の成長率予測を下方修正し、2年連続のマイナス成長との見通しを示した。経済の屋台骨であるはずの製造業の落ち込みが背景にある。

フランスは財政赤字削減に向け増税と歳出削減を打ち出している。投資家はおおむね必要な措置と受け止めているが、景気への悪影響が予想される。

UBSの欧州金利戦略責任者ラインアウト・デボック氏は、成長率が回復しない場合、ユーロ圏の金利が来年1%まで低下する可能性があると指摘した。中国の成長鈍化も投資家の懸念材料だ。

トレーダーは、現在3.5%のECBの政策金利(中銀預金金利)について、来年後半に2%まで下げて打ち止めとみている。2%は、多くのエコノミストが景気をふかしも冷やしもしない「中立金利」とみる水準。バンク・オブ・アメリカのアナリストは、ユーロ圏経済が2%を維持できるか懐疑的だ。「現在の状況は17─18年と大差ない。民間の内需は依然として驚くほど弱い」とし、欧州債利回りの低下(価格上昇)を予想する。

ただ投資家が全員ユーロ圏の先行きを悲観しているわけではない。

プレミア・ミトン・インベスターズの債券部門責任者、ロイド・ハリス氏は「欧州のデータは問題なく、実際、予想を上振れている」と述べ、市場は利下げを織り込み過ぎだと指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド総合PMI、12月は58.9に低下 10カ月

ビジネス

プライベートクレジット、来年デフォルト増加の恐れ=

ワールド

豪銃撃、容疑者は「イスラム国」から影響 事件前にフ

ワールド

スーダン、人道危機リストで3年連続ワースト1位 内
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中