ニュース速報

ビジネス

アングル:アジア企業、ドル建て債務借り換えに苦労 財務が劣化

2022年07月13日(水)08時16分

 7月11日、アジア企業はドル建て債務の借り換えが一段と困難になりそうだ。写真はインドネシア首都ジャカルタのアパート建設現場で働く人々。2016年7月撮影(2022年 ロイター/Iqro Rinaldi)

[11日 ロイター] - アジア企業はドル建て債務の借り換えが一段と困難になりそうだ。ドルが20年来の高値にあるほか、最近のインフレ高進で各中央銀行が利上げを余儀なくされる中、主要な財務指標が低下している。

これら企業のインタレスト・カバレッジ・レシオ(営業利益を支払利息で割ったもの。高いほど返済能力があると認められる)は3月末時点で5.1倍と1年ぶりの低水準となった。中国、韓国、インドネシア、ベトナムなどの企業に押し下げられた。

ロイターはリフィニティブから得られた比較可能なデータ1700社分(金融を除く)を分析。これらの企業の時価総額は合計で10億ドル以上に上る。

アジア企業は昨年、ドル建てとユーロ建ての債券で合計3380億ドルを調達。しかし、2021年は金利の底打ちも見られた。22年3月末までにアジア企業の債務は6兆7000億ドルに急増し、2年前から25%増加した。

S&Pグローバルのアナリスト、ザビエル・ジーン氏は「過去5年間は金利が低水準で推移し、地域通貨が経済状況の低迷に対して底堅かったため、通貨リスクは隠れていた。金利が上昇するにつれ、通貨リスクは資金調達の選択肢などにおいて、より目立つようになるだろう」と述べた。

中国企業のインタレスト・カバレッジ・レシオは、昨年9月末の5.10倍から3月末には3.02倍に低下した。

HSBCのシニア株式ストラテジスト、ヘラルド・バン・デル・リンデ氏は、昨年の中国恒大集団の危機以来、圧力を受けている中国の不動産会社は債務借り換えで苦労するだろうと述べた。

しかし、ほとんどのアジア企業では債務返済が滞る兆候はない。実際、金利・税・減価償却費控除前利益に対する純債務を示した別のレシオの中央値は3月末時点で2.5と、7年ぶりの低水準にある。これが3を超えると、懸念材料と見なされる。

S&Pのジーン氏は、少なくとも8社に1社の企業の信用度が今後12カ月の間に金利上昇のために圧迫される可能性があると指摘。インフレが続けば、その数は6社に1社に増える可能性がある。

ドル建ての借入はすでに激減している。

今年上半期にアジア企業が発行したドル建てまたはユーロ建ての債券はわずか98件で、過去6年間で最も少なく、昨年の338件から減少している。

(Patturaja Murugaboopathy記者)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾包囲の大規模演習 実弾射撃や港湾封鎖訓

ワールド

和平枠組みで15年間の米安全保障を想定、ゼレンスキ

ワールド

トルコでIS戦闘員と銃撃戦、警察官3人死亡 攻撃警

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 10
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中