ニュース速報

アングル:FRBのハト派転換、米家計にもたらす好影響

2019年03月23日(土)10時58分

[ワシントン 21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は20日までの米連邦公開市場委員会(FOMC)で、年内に利上げする公算は乏しいとの考えをはっきり打ち出した。これは米国の家計に対する、どうか買い物を続けてくださいというメッセージだ。

FRBが操作する政策金利が上がれば、他のさまざまな金利も上昇し、クレジットカードの利用や住宅、自動車購入などのコストが増大する。

ただ20日時点でFOMCの大半のメンバーが想定する年内の利上げ回数はゼロとなり、投資家の間ではFRBの利下げを促すほど景気が減速するかもしれないとの見方も広がっている。

こうしたFRBのハト派姿勢への転換が家計にもたらす好影響を以下に記した。

<借り入れ条件改善>

FRBの金利見通し修正によって10年物国債利回り(長期金利)を含む主要な市場金利が低下し、つれて住宅や自動車を買う際に利用するローンの金利が下がってきている。既に住宅ローン金利は低下基調で、クレジットカードの金利も今後低下するかもしれない。

<薄れる貯蓄の妙味>

金利低下は、一般的な貯蓄商品の妙味を薄れさせることで消費を後押しする。利回りが下がれば貯金の利子は減り、安全な国債に投資しているファンドのリターンは低下する。これは貯蓄資金の運用収入への依存度が比較的大きく、米国債利回り低下で痛手を受ける退職者世代には問題をもたらす。これに対してFRBは、退職者は景気全般を支える政策手段の恩恵を受けていると主張している。

<株価上昇>

債券利回り低下とコインの裏表の関係にあるのが株価上昇だ。株高は401kなどの確定拠出型年金プラン、とりわけ運用資産に占める株式の割合が多い若い世代に追い風となる。

今回のFOMCの結果公表後にS&P総合500種は大きく上昇。これには借り入れコスト低下が企業利益を押し上げるとの見方が反映されている。

株高は、いわゆる資産効果を享受する人々が財布のひもを緩めてくれるため、個人消費増加につながる可能性もある。

<労働市場支援>

米国の失業率は50年ぶりの低水準付近にあるが、足元で労働市場の軟化が見て取れる材料がいくつか出てきている。2月の非農業部門雇用の増加ペースは急速に鈍化し、週間新規失業保険申請件数はじりじり増加してきた。

こうした中でFRBがハト派姿勢となったのは、労働市場をしっかりした状態に保つ狙いがある。そうすれば2007─09年の金融危機を抜け出した後もなお経済が振るわなかった局面で職探しをあきらめた人たちの求職活動再開を促進できるだろう。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中