廣瀬 ウクライナの反転攻勢がうまくいかず、ロシアは攻勢を強めようとしていました。そんな中でウクライナがクルスクに奇襲攻撃を行ったことで、ロシアも世界も非常に驚きました。
ロシアはウクライナ東部での戦いを優先し、クルスクの軍備はかなり手薄になっていたのですが、何の対処もしないわけにもいかない。そのため訓練が不十分な徴兵者などを含む部隊が送られましたが、依然、苦境に陥っていたところに追加増員されたのが北朝鮮兵です。
2024年6月のプーチン訪朝時の「包括的戦略パートナーシップ条約」によって、堂々と参戦による協力も得られるようになったわけです。
もう少し具体的にお話しすると、部分的動員令も不評で兵員確保に苦悩しているロシアは、地方の少数民族や囚人を動員したものの、それでも十分な数には及びませんでした。そこでロシアが目をつけたのが外国兵(*)です。
キューバやシリア、ネパール、アフリカ諸国や中央アジア諸国の人々が、特に多く使われたと言われています。
しかしながら、当然ですが、今日の国際秩序の下において外国兵を使うと、必ずその国の政府と問題になるわけです。でも、ロシアもどうにか兵員を確保しなければならない。そこで生まれたのが、北朝鮮との包括的戦略パートナーシップ条約になります。
北岡 なるほど。また、ウクライナでは政治的腐敗が一部で言われていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
廣瀬 今も非常に腐敗しているようです。前線に送られた兵器や支援物資は、途中でかなり抜かれているようで、事前に送られてくるリストの中身と異なり、政府の高官が相当私腹を肥やしていると現地の方から聞きました。
ウクライナの一般の方から度々聞いた「誰のための戦争なのか」という声はとても重く響きました。
北岡 政府を引き締めなければ、外からの援助が得られないわけですから、これはゼレンスキー政権にとってはかなり痛いですよね。どのような手を打っているのでしょうか。
廣瀬 腐敗を防がなければならないことはゼレンスキー大統領もわかっているので、閣僚の左遷などを度々行っています。ただ、あくまでもそれは氷山の一角に手をつけているに過ぎないというのが実情です。
北岡 それは厳しい状況ですね。では、次に池内先生から特にイスラエルとパレスチナの話を中心に中東問題を振り返っていただけますか。