建国神話とナラティブ(物語)を再検証すること
いま求められているのは子供たちに正しい情報と誤情報の見分け方や、何を、そして誰を信頼すべきかを社会全体で教えること。違和感や反発を感じる意見にも耳を傾けることが大事だと伝えることだ。
情報過多の状況は止められないが、サイロ化した環境に風穴を開けることはできる。人々の情報リテラシーと批判的思考のスキルを高めることも可能だ。そうすれば情報へのアクセスの容易さは熟議民主主義を妨げる要因ではなく、促す資産となる。
第2に、哲学者のジョン・ロールズの言う「自尊の社会的基盤」を強化するため、幅広い対話を行うこと。自尊の社会的基盤とは、意味ある人生設計を立て追求する一個の人間として社会に認められ、支えられていると、誰もが感じられるようなコミュニティーの在り方である。
そのためにはまず誰もが帰属意識を持てるコミュニティーにする必要がある。
政治的・市民的自由をより強固に保障し、全ての人に公平に社会的・政治的事業に参画する機会を提供し、人々が信頼して積極的に支える制度を整備すること。これらは全て、誰もが主体的にこの国の弊害を正す試みに参加するには不可欠の条件だ。
こうした大事業に必要な理念的資源の多くは既に存在している。それは私の小学校の教師たちが誇らしげに語っていた基本原則であり、市民的な議論と対話を可能にする規範だ。
第3に、建国神話とナラティブ(物語)を再検証すること。民主主義と自由と平等は素晴らしい理念だが、既に達成されているわけではない。絶えずその実現を追求すべき理念なのである。人々が不公平感と他責思考にとらわれていれば、その実現は望めない。
いま生きているアメリカ人は誰もこの国の歴史的な過ちに責任を負っていない。けれども力を合わせてその過ちを乗り越えれば、誰もが恩恵を受けるはずだ。
(筆者は1960年生まれ。ハーバード大学大学院で政治学博士号取得。専門は国際関係論。著書に『国際紛争』(共著、有斐閣)など)
超大国の現在地と「トランプ後」の世界