軽減税率のための財源確保1兆円を優先し、子育て支援の3000億円が先送りされたが、この3世代同居への補助については、早速、2016年度予算案に盛り込まれている。3世代同居への補助制度、具体的には、「(1)台所(2)浴室(3)トイレ(4)玄関のうち2種類の設備を2カ所以上設置した新築木造住宅、同じ条件を満たすよう(1)~(4)の設備を増設した中古住宅を対象に、1件あたり最大150万円を補助する」(東京新聞・2月28日)というもの。現行制度を拡充させる形で150億円が予算に盛り込まれているが、なかなか解せない。「少子化の流れに『終止符』を打つ」ために着手されるのが3世代同居への補助でいいのか。
政府の見解は、親たちと一緒に住めば、働く女性が会社を辞めることなく働き続けることができるし、子供も産みやすくなるでしょう、というもの。これに対して野党は、2世帯同居ができるような家を新築したり増設できるのは経済的に恵まれた層で、彼らに150億円の補助金が流れていくだけ、と指摘している。少なくとも最優先にすべき事項ではないだろう。
なぜこのような政策を重視するのか。伝統的家族観への回帰をところどころで見せてきた現政権の思惑もあるだろう。もっとも顕著に現れているのが、自民党が提示した「日本国憲法改正草案」。「家族、婚姻等に関する基本原則」を記した第24条では、現行憲法には無い一文「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」が冒頭に加わる。助け合わなければならない、と断定されているのだ。
この一文について、自民党憲法改正推進本部が作成した「日本国憲法改正草案Q&A」では、「家族は、社会の極めて重要な存在ですが、昨今、家族の絆が薄くなってきていると言われています。こうしたことに鑑みて」、この条文を入れたと説明される。絆が薄くなったというよりも多様化しているのであって、その多様化に対応することができなければ、子供を育てながら働く環境を整えることが難しくなる。でも彼らは、「じゃあ、親と一緒に住んで、あるべき家族像を満たしてくれるのならば補助金を出す」という施策に取りかかっている。
この夏の選挙に響くと判断すれば、保育の拡充を訴える声をひとまず大きくしていくはずだが、自民党が目指している家族像とは、「互いに助け合わなければならない」家族像にある。この前提を踏まえたうえで見定める必要がある。