[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の会見で、「為替にリンクして政策は決めない」としつつ、為替は経済全体に影響を与えると指摘。急激な円高が経済や物価に悪影響を与えるならば追加緩和に踏み切る姿勢を示した。

さらに英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票をめぐり英国など海外の中央銀行と情報交換していると強調した。

<英EU離脱、海外中銀と意見交換>

国際金融市場では英国民投票をめぐる思惑からリスク回避の動きが進んでおり、市場では、仮に英国がEU離脱を決める場合の市場波乱に備え、日米中央銀行が今週は政策変更(米国は利上げ、日本は追加緩和)を見送るとみられていた。

黒田総裁は、今回の決定会合で英国のEU離脱が議論になったかは「議事要旨などを見てほしい」と述べるにとどめたが、「英国など海外の中央銀行と緊密に意見交換しており、日本および世界経済に与える影響は十分注視したい」と述べた。

英国が離脱を決めて市場が混乱する場合、邦銀によるドル調達が懸念されているが、総裁は「ドル資金の調達などで障害が出るならば、主要中銀と密接な連携を取っているので十分対応できる」として国際的な資金供給で協調余地があると強調した。

<為替の物価への影響、長引く可能性>

アベノミクスの原動力であった為替円安は、昨年の夏に反転。以降、緩やかな円高基調で推移しているが、今年に入り円高が急進。16日も日銀の追加緩和見送りを経て、ドル/円が一時103円台と2014年8月以来1年10カ月ぶりの円高水準となった。

総裁は「経済の基礎的条件を反映しない円高や変動率の増加は好ましくないと思っているため、国際金融市場の動きに留意したい」と述べた。

また「このような形で円高が進んでいることが日本経済、将来の物価に好ましくない影響を与える可能性があるのは、その通り」と指摘。「為替は、石油価格と比べ物価への影響がじわっと広がるが、一方、物価への影響は長引くリスクがある」として「注視している」と強調した。

英投票後に臨時会合を開く可能性についてはコメントを控えた。

<参院選公約にコメント控える>

三菱UFJ東京銀行が国債市場特別参加者(プライマリーディーラー=PD)資格を返上し、大規模な金融緩和の弊害が指摘されているが、総裁は、「これまでのところ国債買い入れは円滑に行われている」「長くデフレが続いてきた現状を踏まえ、(現行の)マイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)を継続するのが何より重要」と強調した。

マイナス金利の実体経済への効果は「徐々に明確になる」とし、「貸家が伸び、持ち家はそれほど伸びていないが、住宅投資に効果が出ている」と強調した。

また「マイナス金利による金利低下が銀行の収益を下押しするのは事実」だが「20151年度決算で大手銀・地銀は極めて高い収益を上げている」とも指摘、悪影響は小さいとの認識を示した。

金融機関によるマイナス金利懸念は与野党にも共有されており民進党は参院選公約で撤回を掲げた。自民党も金融政策に対する言及を公約から取り外している。黒田総裁は選挙公約への影響についてはコメントを控えた。

2017年4月に予定されていた10%への消費増税延期については、与党内でも意見が割れており「これで黒田総裁は追加緩和が難しくなる」(与党幹部)との見方もあるが、総裁は「これまでのところ政府は健全化目標に即して財政運営している」と延べ、コメントを控えた。

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(竹本能文 伊藤純夫 編集:吉瀬邦彦)

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